ペーパーレスとは? 電子化OKな文書や取り組み方を解説

ペーパーレスとは? 電子化OKな文書や取り組み方を解説

近年注目されている「ペーパーレス」。ペーパーレスとは、紙の資料などをデジタル化することです。

現在、新型コロナの影響でテレワークが広まる中、ペーパーレス化はどんどん浸透しています。しかし、まだ紙でのやりとりが多い会社もあるでしょう。

そこで、今回はペーパーレス化することで企業にどのようなメリットをもたらすのかや、取り組み方などを解説します。

石動総合会計法務事務所代表 石動龍様

【この記事の監修者】
石動龍

石動総合会計法務事務所代表

青森県八戸市在住。公認会計士、税理士、司法書士、行政書士。読売新聞社記者などを経て、働きながら独学で司法書士試験、公認会計士試験に合格。ドラゴンラーメン(八戸市)店長、ワイン専門店 vin+共同オーナー、十和田子ども食堂ボランティアとしても活動している。趣味はブラジリアン柔術(黒帯)と煮干しラーメンの研究。2021年中の不動産業開業が目標。
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ペーパーレスとは?

ペーパーレス(Paperless)とは「紙を少なくする」ことを意味します。企業におけるペーパーレス化とは、今まで紙で取り扱っていた文書を電子化し、パソコンやタブレットなどのデバイス上で仕事や文書管理を進めていくことを指します。

現在、デジタル化やテレワークの普及、国が掲げる「SDGs(持続可能な開発目標)」の一環、そして法整備の面からもペーパーレスの必要性が増しています。それぞれの面から詳しく、ペーパーレスとは何かについて見ていきましょう。

デジタル化やテレワーク推進から見る「ペーパーレスとは」

近年、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉をよく耳にします。企業が、AIやIoTを始めとするデジタル技術を活用し、業務改善や、製品・サービス、ビジネスモデルそのものを変革させ、企業の優位性を高めることを意味します。

製品・サービスや業務のデジタル化が進む中で、紙の書類でのやりとりが減り、ペーパーレス化が進展する傾向にあります。

SDGsの一環としての「ペーパーレスとは」

現在、世界的にも2015年9月に国連サミットで採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」の取り組みにおいて、8つの優先事項として「生物多様性、森林、海洋等の環境の保全」が求められています。主原料が木材となる紙の大量生産は、人類及び地球環境全体にとって深刻な懸念事項となっています。

環境に考慮した持続可能な社会を作るためにも、SDGsの一環としてペーパーレス化は非常に重要な取り組みと言えます。

(参照)持続可能な開発目標(SDGs)と日本の取組

e-文書法、電子帳簿保存法から見る「ペーパーレスとは」

ペーパーレスを推進するために、1998年に「電子帳簿保存法」や2004年に「e-文書法」が施行され、法律が整備されました。2015年の電子帳簿保存法改正では、これまであった3万円未満という金額上限なく、契約書や領収書の電子化が認められました。

また、2016年の改正では、領収書や請求書をスマホやデジカメで撮影したデータを電子化することも可能となり、さらに2020年には電子取引に関する改正が行われています。

このように、電子帳簿保存法の幾度もの改正で規制が緩和され、ペーパーレス化が後押しされています。

ペーパーレス化の現状と課題

日本企業におけるペーパーレス化の現状や課題ついて解説します。

企業におけるペーパーレス化の現状

総務省が発表した令和2年版「情報通信白書」によると、2020年4月時点で、会社からのテレワーク推奨・命令率は4月7日の緊急事態宣言対象7都府県において53.3%。電子契約の採用率は43.3%となっています。

企業におけるペーパーレス化の現状

(画像引用)総務省|令和2年版 情報通信白書|日本企業におけるデータ活用の現状

また、上記の画像の通り、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の取り組みから見ると、3年以上前から「社内業務のペーパーレス化」を実施している企業は42.4%と、最も多い数値となっています。一方で、直近3年以内に実施した取り組みは、「テレワーク、Web会議などを活用した柔軟な働き方の促進」の27.2%となっています。

平成24年版「情報通信白書」では、「社内業務のペーパーレス化」を進めている企業は2012年度時点で29.1%だったのに対し、近年はペーパーレス化が広まっていることがうかがえます。

ペーパーレス化を阻むもの

まだまだ紙文化が残っている企業や、改ざんなどの懸念からペーパーレス化をしない企業も存在しています。

ペーパーレス化が進まない主な原因として、会社で定められた規定や習慣が挙げられます。文書管理のルールにおいて、「提出や保管、配布」は紙で行うものという固定観念が定着している会社もあります。そのため、ペーパーレス化の必要性を従業員が感じていたとしても、組織として実行するのが難しい場合があります。

また、紙を使った業務に慣れている従業員が多い場合、ペーパーレス化が短期的には負担となる場合もあります。

e-文書法、電子帳簿保存法とは

ペーパーレスの対象となる文書は、電子帳簿保存法やe-文書法により定められています。1998年7月に制定された電子帳簿保存法では、国税関係帳簿書類の全部または一部について電子データによる保存を認めています。その後、法改正が行われ、紙媒体の書類をスキャンして電子保存したものも認められることになりました。

2005年4月に制定されたe-文書法は、「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」と「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」の2つの法律から成り立っており、対象となる文書は多岐にわたります。

e-文書法、電子帳簿保存法の対象となる文書

e-文書法の基本要件は、各府省により異なりますが、主に「見読性」「機密性」「検索性」の3つです。電子帳簿保存法の範囲である国税関係書類と医療情報は、「完全性」が要件となります。

e-文書法は、電子帳簿保存法を包括する法律であり、対象となる書類も包括的に規定しています。電子帳簿ではない社内の稟議書、有価証券報告書、人事関連資料などの保存については、e-文書法が根拠となります。

対象となる文書は、会計帳簿、契約書、領収書、請求書、納品書などの「財務・税金関係書類」や、定款、株主総会・取締役会議事録などの「会社関係書類」、そして貸借対照表、損益計算書といった「決算に関わる重要書類」など多岐にわたります。

ペーパーレスの対象となる書類例

  • 総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金・買掛金元帳固定資産台帳、売上・仕入帳などの帳簿書類
  • 棚卸表、貸借対照表、損益計算書などの決算書類
  • 契約書、領収書、見積書、請求書、注文書、納品書などの証憑書類
  • カタログや書籍などの紙類
  • 販促物や図面、商品サンプル など

詳しくは、以下のページを参照してください。
e-文書法によって電磁的記録による保存が可能となった規定(PDF)|内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室

また、e-文書法などの規定により、ペーパーレスの対象とならない文書もあります。

ペーパーレスの対象とならない書類例

  • 緊急時など即座に閲覧する必要がある書類
    災害対策マニュアルや安全手引き、船舶に備える手引書など
  • 現物性が高い文書
    免許証・許可証など

ペーパーレス化することで生じるメリット

ペーパーレス化することでどのようなメリットがあるのでしょうか。 ペーパーレス化する前と後でオフィスがどのように変わるのか、具体的に見ていきましょう。

① 業務の効率が上がる

資料が全て紙で保存されている場合、必要な資料を見つけ出すのに想像以上に時間がかかってしまいます。 ファイリングが適切にされていたとしても、 調べたいキーワードが記載されている書類を見つけ出すのに一苦労です。

これがもし電子化されていれば、こういった手間は省けます。キーワード検索によって一瞬で、必要な情報が記されている書類が手に入ります。また多数の人が同一文書を同時に参照することや、書類を取りに行くために他の階や部署へ移動する必要もなくなります。

② 劣化、紛失のリスクを下げる

紙で保存している場合、長期間の保存によって紙が劣化し文字が読みづらくなることがあります。また、ありがちな例を挙げると、不注意で飲み物をこぼした時も情報紛失の危険性を伴います。火事なども大きなリスクと言えるでしょう。

一方ペーパーレス化しておけば、こういった心配がなくなります。もちろんデータを保管しているUSBやサーバーなどは厳重に保管する必要がありますが、バックアップを取るなどの対策を講じることでそのリスクも軽減されます。

③ オフィススペースの有効活用につながる

他にも、スペースの有効活用が挙げられます。紙で情報を保存している場合、データ量が膨大になればなるほど資料が分厚くなり、かさばっていきます。

ペーパーレス化すれば、机の上に分厚い資料が積み重なっている景色ともおさらばです。重たい資料をキャビネットから運んできて、自分の机の上で調べものをした後に、その資料を片付けるといった雑務に追われることがありません。

④環境への配慮につながる

そして何よりも、湯水のごとく使われていた紙資源の消費を減らす効果があります。会議資料など、一度の使用で即廃棄するといったことがなくなれば、温室効果ガス削減などにもつながります。

ペーパーレス化することで生じるデメリット

メリットがあればどうしてもデメリットも存在します。ペーパーレス化をすることで生じる可能性があるデメリットを紹介します。

ただこれらのデメリットは、従業員への教育や導入に掛かるコストなど、初期に発生するものがほとんどです。そのため、ペーパーレス化をして業務が軌道に乗るようになれば、大きな問題にはなりません。

① 資料によっては見にくくなる

ペーパーレス化することで、複数の資料を同時に紙に出力して見比べるといったことができなくなります。文字が細かい文書を電子デバイスで読む場合、拡大して表示倍率を大きくする必要があります。その際、どうしても画面に表示できる範囲が狭くなるため、視認性が落ちてしまう懸念点も生じます。

ただ、こういった問題はディスプレー画面を大きくしたり、枚数を増やしたりすることで表示領域を広げられます。ペーパーレス化のデメリットは、そういった工夫によって解決することがほとんどです。

② 取引先が紙中心の場合は電子化できないケースも

社内でやりとりする書類の場合、電子化することは難しくはないでしょう。しかし、取引先がペーパーレス化をしていない場合、紙でのやりとりを求められます。その場合は、郵送でのやりとりや、データ取り込みに支障が出てきます。

③ 導入時にコストが掛かる

ペーパーレスへ移行する際に、新しい管理システムを導入したり文書閲覧するためのデバイスを購入したりする必要があります。そのため、どうしてもペーパーレス導入時にはある程度のコストが発生します。

またシステムの選定や、ペーパーレスで業務が滞りなく進行するようルールを整備する手前の段階にも発生します。金銭的コストと人的コストが初期投資として必要になるでしょう。

ペーパーレス化を導入するための必要な取り組み

ペーパーレス化をしていくにあたり、どのような取り組みが必要になるのでしょうか。

① どの文書を電子化できるか確認する

まずは現在の業務の中で、ペーパーレス化できる文書は何かをピックアップしましょう。なかには、電子化が認められている文書と認められていない文書があるので注意してください。

② 必要なツールやシステムを用意する

ペーパーレス化する業務や文書に対応しているツールやシステムを用意しましょう。例えば、請求書であればクラウド請求書サービス、企業間の取引では電子帳票システムなどです。また、ペーパーレスFAXやペーパーレス会議システムなど、業務においてさまざまなITシステム・ツールが出ています。

それぞれ業務や組織の規模に応じたITシステム・ツールの導入がおすすめです。

③ 社内へ意義や目的を周知する

ペーパーレス化することで業務効率が改善するからといって、一気に移行してしまうとうまくいきません。まずは、従業員になぜペーパーレス化が必要なのか、目的やメリットを説明しましょう。その上で、できる範囲からペーパーレス化を行ってください。

④ 従業員へのマニュアルの用意

紙でのやりとりに慣れてしまった従業員にとって、電子化したデータをうまく活用するのはそう簡単なことではありません。そのため、マニュアルの用意や教育期間を設けるなど、ペーパーレス化に伴う準備が必要となります。また、機密データの取り扱いやセキュリティー面において、正しくデータを取り扱う方法や、場合によっては端末の扱い方を教えることも想定されます。

ペーパーレスを導入して、業務効率を上げよう!

ペーパーレス化は、働き方改革の一部でもあります。テレワークの普及により紙からデータへの移行は避けられないのが現状です。しかし、まだまだ定着に至らない会社も多いでしょう。

業務効率化を図ることができ、人件費のコスト面でも削減できるなど、メリットが多いです。この記事を参考に、ペーパーレス化について考え、会社での導入を検討してみてください。

<この記事のポイント>

  • ペーパーレス化には、業務効率化の他スペースの有効活用や環境対策などメリットがたくさんある
  • 導入には従業員への教育や周知などをしっかり行う必要があるが、長期的に見るとコスト削減につながる

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