電子請求書サービスを解説!メリット・デメリットとは?
企業間の取引で、請求書などの電子データ化が注目される中、電子請求書サービスを導入する企業が増えています。請求書を電子データ化したものを電子請求書といいます。身近なところでは、Web上で確認できる携帯電話などの請求書が電子請求書です。
2005年に「e-文書法(通称)」が施行され、法的に書面での保管が義務付けられている帳簿や請求書などを、電子化した文書で保存することが認められました。
電子請求書とは?
電子請求書の特徴は、送付方法と保存要件にあります。
請求書は郵送で発行するのが常でした。電子請求書は、請求書原本をPDFのように電子化しメール添付して送付する、データ化した請求書を一斉に自動配信するなど、タイプにより特徴が異なります。
電子請求書を法的に有効するために、「e-文書法(通称)」と「電子帳簿保存法(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律)」に従う必要があります。 以前は、税務署に申請を出す必要がありましたが、令和4年1月以降、請求書受け取り側の税務署の承認は不要となります。
その他、電子帳簿保存法の改正に関する事項は、以下のページをご参照ください。
令和3年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しについて|国税庁
電子請求書の種類
電子請求書は、3種類に分かれます。
メールで添付タイプ
請求書をメールに添付して送る方法です。数字や内容を改ざんされないようPDFに変換します。手動でも手軽に送付できるものですが、自動配信できるサービスも利用できます。誤送信を防げるため、件数が多いときに特に便利です。
メールで配信する際は、セキュリティーに配慮し、保存は電子データで対応しましょう。
こうしたメールで添付タイプは、大規模なシステムを導入する必要がないため、フリーランスや自営業・中小企業向けと言えます。
ダウンロードタイプ
ダウンロードタイプは、クラウドサービスを利用します。PDF化した請求書をクラウド上にアップし、取引先がアクセスしダウンロードします。取引先がダウンロードしたかどうか確認でき、一定期間(数カ月)の保存が可能など、さまざまなサービスが提供されています。 発行側は要件を満たしていれば、電子化データでの保存も可能です(紙媒体での保存は不要です)。
ダウンロードタイプは、中小企業などに向いています。
電子データタイプ
ダウンロードタイプを拡張したタイプです。クラウド上で請求書の作成・発行・受領を一貫して行えます。検索性も高く、請求書の再発行や修正にも対応し、請求書への対応が済んでいない取引先へ一括で催促できます。提供サービスによっては、支払い通知書の発行や受取に関する業務も電子化できます。
発行側・受領側も要件を満たしていれば、電子データでの保存も可能です(紙媒体での保存は不要です)。
電子データタイプは、中小企業や大企業に向いています。
電子請求書サービス導入のポイント
電子請求書は、発行する側が主体だと思われがちですが、受領する側の態勢が整っていないこともあります。独自の請求書フォーマットを採用していたり、請求書を紙媒体で保存していたりする場合もあります。その場合、請求書をPDF化して送付しても、取引先は結局は印刷して保存しなければなりません。
電子請求書導入は、取引先の理解と対応が必要になります。取引先の状況に合わせて柔軟に対応できるようにしておきましょう。
電子請求書導入のメリット
電子請求書を導入することで、「発行する側」「受領する側」の双方に経費削減のメリットが生まれます。大企業であればあるほど、請求書の件数も多くなり、処理に掛かる経費も大きくなります。電子請求書にすることでコスト削減と業務効率化を実現できます。
電子請求書は、地球環境保護や働き方の変化により注目度が高まっているペーパーレス化を推進することにもつながります。
電子請求書導入のメリットを見ていきましょう。
事務処理の効率化
取引終了後の事務処理として、請求書の作成・郵送などがあります。中でも請求書の印刷や封入作業は、企業の規模が大きいほど取引件数も多くなり、時間と人手を要します。
電子請求書を導入すれば、システム上で作成・送付履歴・保管の処理が可能で、時間と手間を大幅に削減できます。郵送に掛かる時間を短縮でき、紛失や送付漏れの心配も少なくなります。 必要な請求書を簡単に検索できるため、再発行しなければならない時や急な修正にもすばやく対応できます。
請求書を受領する側も、同様に業務の効率化が図れます。
コスト削減
請求書を郵送するには、請求書の印刷・インク・封筒・用紙代、郵送費、そして人件費が掛かります。電子請求書導入により、これらの経費を削減できます。
電子請求書は、Webの画面上で請求書作成から送付までを完結できるタイプもあり、請求書の郵送に掛かる主な費用が不要になります。用紙代もかからず、保管のためのスペースも不要になります。
多様化する働き方に対応
電子請求書の利用は、テレワークをしているリモートワーカー、在宅勤務者にとってもメリットをもたらします。パソコンがあれば、自宅からでも経理業務や請求書送付ができます。
社印などの印鑑は、主に請求書の偽造や改ざんなどを防止し、内容の信ぴょう性を向上させるために用いられています。パソコンのWordやExcel、PDFなどのソフトにも利用できる電子印鑑の登場で、電子請求書を活用しやすくなりました。
電子請求書で注意したいデメリット
電子請求書にはデメリットもあります。
セキュリティー管理
請求書には金額をはじめ、振込先など重要事項が多く含まれています。電子請求で特に注意が必要なのがセキュリティー管理です。
電子請求書にはインターネット環境が必須になるので、外部からのサイバー攻撃を受けたり、内部からの情報流出が起こったりする可能性が考えられます。セキュリティーの高いサーバーに格納したり、内部でのアクセス権の制限を行ったりする必要があります。
取引先のシステム環境
電子請求書を導入するには、取引先の同意が基本的に必要になります。取引先のインターネット環境や経理業務状況を確認しなくてはなりません。請求に関しては、指定のフォーマットが存在するのか、紙媒体を使用しているのか、常時メールのやり取りが可能であるのかどうかを確認する必要があります。
取引先の状況に応じて請求書の電子化を進める必要があります。
電子請求書が負担になる可能性も
電子請求書は、導入する側が主体となり、受領する側が発行する側に合わせていく形になります。つまり受領する側によっては、電子請求書が負担になる可能性も考えられます。
導入・発行する側は、請求書の電子認証やタイムスタンプを有効に化するために、取引先とデジタルIDの証明書を交換し、信頼済み証明書としてリストに追加してもらうとより良いです。
電子化した請求書を送付しても、保管に紙媒体が必要であれば、印刷しなければなりません。また、発行する側が専用サーバーを利用する場合、発行する側のサーバー管理状況に合わせなければなりません。
導入コストがかかる
電子請求書を導入するコストと、郵送で発送する際に発生するコスト(郵送費や印刷代、人件費など)を対比したとき、企業によっては導入コストの方が割高になる可能性があります。
大企業のように、取引先企業の場合には、導入してもコストが大きくは下がらないこともあります。
電子請求書を取り巻く環境も変化
電子請求書は、まだ課題や懸念点も残されていますが、請求書に押す印鑑も電子化できるようになり大きく注目されています。
請求書を電子化することで、テレワークがしやすくなり、経理業務を効率化できます。
電子請求書の導入は、発行する側が主体になりがちですが、取引先、つまり受領する側の環境や態勢に配慮し、理解を得ることが重要です。
世界的にも電子請求書の普及はハイペースで進んでいます。日本では、法改正などは既に進んでおり、新型コロナウイルスの影響でICTの利活用が促進されていることから、個人事業主や中小企業にとっても、身近になっているでしょう。
<この記事のポイント>
- 電子請求書の導入で、業務効率化やコスト削減の可能性
- セキュリティー管理や取引先との調整など、注意点も