経費削減を効果的に行おう!費目別&業務効率化によるアイデアまとめ

経費削減を効果的に行おう!費目別&業務効率化によるアイデアまとめ

会社にとって「経費削減」を行うことは、とても大切なことです。また、経費削減は適切に実施しないと、従業員のモチベーション低下を引き起こす可能性もあるため注意が必要です。
そこで今回は、経費削減を検討する上で、押さえておきたい基本から具体的なアイデアまでをご紹介します。費目別に考える対策と、業務効率化による対策の計11項目のアイデアをまとめました。

石動総合会計法務事務所代表 石動龍様

【この記事の監修者】
石動龍

石動総合会計法務事務所代表

青森県八戸市在住。公認会計士、税理士、司法書士、行政書士。読売新聞社記者などを経て、働きながら独学で司法書士試験、公認会計士試験に合格。ドラゴンラーメン(八戸市)店長、ワイン専門店 vin+共同オーナー、十和田子ども食堂ボランティアとしても活動している。趣味はブラジリアン柔術(黒帯)と煮干しラーメンの研究。2021年中の不動産業開業が目標。
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経費削減の基本的な考え

経費削減は、基礎知識を得て、正しい手順で行うことが大切です。

経費を固定費と変動費に分けて考える

経費は、「固定費」と「変動費」の2つに分類して考えるのが基本です
固定費は、企業の売上の増減とは関係なく、たとえ製造や販売活動を行っていなくても、賃借料などのように一定に掛かる費用のことを指します。
変動費は、売上に比例して増減する費用のことを指しています。つまり、売上を上げれば上げた分だけ増えていく費用が変動費です。

<製造業の場合の例>
・固定費

直接労務費、間接労務費、福利厚生費、減価償却費、賃借料、保険料、修繕料、水道光熱費、旅費、交通費、その他製造経費、販売員給料手当、通信費、支払運賃、荷造費、消耗品費、広告費、宣伝費、交際・接待費、その他販売費、役員給料手当、事務員(管理部門)・販売員給料手当、支払利息、割引料、従業員教育費、租税公課、研究開発費、その他管理費

・変動費

直接材料費、買入部品費、外注費、間接材料費、その他直接経費、重油等燃料費、当期製品知仕入原価、当期製品棚卸高(期末製品棚卸高)、酒税

<引用> 損益計算書の内訳の作り換え|中小企業庁
※上記の分類はあくまで例です。業種によって分類は異なります。

まずは固定費の削減から

経費削減を考える際、まずは固定費の削減を検討しましょう。
変動費は売上に応じて変動しますが、固定費は売上の増減に関係なく掛かる費用なので、固定費を削減することで利益率の増加が見込めます。
なお、一般的に人件費は固定費とされますが、次の2つの方法で変動費とすることが可能です。

  • デザイン部門をアウトソーシングして人件費を外注費とする
  • パート社員や派遣スタッフをスポット採用する

人件費は、多くの業種にとって固定費の中で大きな割合を占めます。上記の方法を活用して変動費にすることで、業績に応じた経費削減につながるでしょう。

経費削減を検討するときの2つの注意点

レクチャーする女性のイメージ

経費削減のアイデアを考える前に必ずやるべき事や注意点が2つあります。

  • 非付加価値業務に絞る
  • 損益分岐点を把握する

それぞれ解説します。

① 非付加価値業務に絞る

まず、経費削減のアイデアを考える前に、どの業務の経費を削減するかも検討しなければなりません。業務は下記の2種類に分類されます。

① 付加価値業務
商品・サービスの製造や提供、品質管理、営業など

② 非付加価値業務
顧客の満足度に関わらない業務

経費削減のために業務の見直しは必要ですが、時間や経費を減らすことだけが目的になって、付加価値業務まで削減してしまってはいけません。
あくまでも、非付加価値業務に絞って削減することが重要です。付加価値業務と非付加価値業務を見極める上では、まずどんな業務を行っているかを分析する必要があります。

② 損益分岐点を把握することから始める

正確な分析を実施するために、基準となる具体的な数値が必要です。そのために、まずは「損益分岐点(BEP : break-even point)」を把握しなければなりません。
損益分岐点とは、赤字か黒字かを可視化できるボーダーラインのことで、売上から支出を差し引いたときに利益が±0円になる赤字と黒字の分岐点を指しています。
つまり、具体的な数値で「〇〇円の売上で利益が出る」ということを示します。どの程度経費を削減する必要があるか正確に判断するために、まずは損益分岐点を把握することから始めなければならないのです。
損益分岐点は、下記の図のようにグラフを描いて示せます。

損益分岐点を示す図

<損益分岐点のグラフの見方>
縦軸:収益・費用
横軸:売上高
売上の線と総経費(固定費+変動費)が交わる点が損益分岐点

損益分岐点より売上高が少ない場合は赤字、多い場合は黒字と判断できます。ちなみに、具体的な算出方法は、カフェ経営の場合を例にご紹介します。

<カフェ経営の場合の損益分岐点の算出方法>
損益分岐点は、下記の3つのステップで算出できます。
例)

  • コーヒー代:1杯450円で販売
  • 変動費:200円/コーヒー1杯
  • 固定費:50万円

① 限界利益を算出する
売上(450円)-変動費(200円)=限界利益(250円)

② 1カ月の総経費を支払える最低販売数を算出する
固定費(50万円)÷限界利益(250円)=販売数(2,000杯)

③ 損益分岐点の売上を算出する
450円×2,000杯=90万円

つまり、コーヒーが月に2,000杯売れて90万円の売上があれば、「売上=総経費」で±0円ということ。経費がこれ以上削減できない場合、1カ月当たり2,000杯のコーヒーを販売しないと赤字になることが分かります。

費目別に考える経費削減アイデア

コスト削減イメージ

経費削減を検討するときは、細かく費目単位でアイデアを考えることがポイントです。そこで、費目別に経費削減のアイデアをご紹介します。

賃料

賃料の経費削減アイデアは2つ。できるなら賃料引き下げの交渉を行うか、同じ広さで安い物件にオフィスを引っ越すかです。東京都心でも場所によって家賃は異なりますし、築年数によっても異なります。

光熱費

光熱費の経費削減アイデアは3つあります。

電気料金比較サービスを利用する

全国数百社ある電力料金の見積もりを行う代理店を活用し、料金を比較してみましょう。法律の改正により電力の小売が全面自由化されたことで、安価にサービスを提供する業者も現在は少なくありません。まずは、比較・検討することで経費削減につながる可能性があります。

電力使用料の可視化・デマンドの抑制

電気代の基本料金は契約電力500kW未満の場合、過去1年の最大デマンド(最大需要電力)で決定されます。電力使用状況を可視化してデマンドを抑えることで基本料金を削減できます。
電力使用状況は、「デマンド監視装置・コントローラー」などのツールを利用することで可視化できます。
デマンド監視装置とは、電力の使用状況を常時監視できる装置です。専用端末を使うタイプやクラウド型など、いくつか種類があります。それらの専用端末やPCの画面で、消費電力の数値やグラフを常時閲覧できるのです。
設定した一日の最大電力使用量の上限を超えそうになると、警告音が鳴るよう設定することもできます。
デマンドを抑えたい場合は、「デマンドコントローラー」を利用することで実現します。デマンドコントローラーは、「最大電力使用量の上限を超えそうになったら電気Aを自動で消す」といったデマンドの自動制御をしてくれます。

省エネ設備の導入

電球の変更や人感センサーを採用することで、省エネ対策になることがあります。例えば、水銀灯からLED照明に変更した場合、LEDは水銀灯の約1/4の消費電力で点灯するため、電気代も大幅に削減できます。
電気代は、下記のように「基本料金+電力量料金+再生可能エネルギー発電促進賦課金」で請求されますが、電気代の単価は電力会社やプラン、使用量によって異なります。

電力料金の計算方法

<画像引用>
出典元:電気の料金プラン一覧|東京電力エナジーパートナー

例えば、電力使用量が120kWhまでだった場合、電気代の単価は1kWh=19.88円です(2021年4月時点)。100Wの電球を1日10時間使用した場合、1カ月の従量料金は以下のステップで算出します。

1) 1時間当たりの消費電力を算出する
100W(消費電力)×10h(時間)=1,000Wh

2) 電力会社が基準としている単位「kWh」にする
1,000Wh ÷ 1,000 = 1kWh

3) 電力会社が指定する電気代の単価で1日当たりの電気代を算出する
1kWh × 19.88円 = 19.88円

4) 1カ月(30日間)の電気代を算出する
19.88円 × 30日間 = 596.4円

※Whは「W=ワット(電力)」に「h=アワー(時間)」を掛けて算出される、電力量を示す単位です。

仮に、オフィスで利用している水銀灯の消費電力が合計50,000Wだった場合、LEDに交換して12,500Wになったとしたら、1日10時間使用した場合の月額従量料金にはこれだけの差が生まれます。
<水銀灯の月額従量料金>
50,000W × 10時間 = 500,000Wh
500,000Wh ÷ 1,000 = 500kWh
500kWh × 19.88円 × 30日 =298,200円

<LEDの月額従量料金>
12,500W × 10時間 = 125,000Wh
125,000Wh ÷ 1,000 = 125kWh
125kWh × 19.88円 × 30日 =74,550円

月間で223,650円の差があり、年間で2,683,800円の経費削減が実現できる計算になります。
また、省エネ設備導入には補助金が支給される支援事業があり、各自治体などが実施している補助金制度があるので調べてみましょう。

固定電話

固定電話の経費削減アイデアには2つの方法があります。

契約会社の見直し

固定電話も、他社比較することで経費削減につながる可能性があります。相見積もりを取って、契約会社の切替えを検討しましょう。

固定電話をIP電話に切り替える

IP電話とは、インターネット回線を利用した電話のことです。IP電話は通常の固定電話と比較して月額の料金が安いというメリットがあります。
IP電話回線には、主に「ADSL」「光回線」「高速モバイル通信」「CATV」の4つの種類があります。現在は、ADSLの利用者数は減少傾向にあり、光回線や高速モバイル通信の利用者が増加している傾向にあります。
高速で高品質な回線を使用したいなら光回線、外出先でも使用したいなら高速モバイル通信、限られた地域内だけで使用するので安い料金プランのサービスを利用したいならCATVなど、目的と使用用途に合った最適なIP回線を選びましょう。
ただし、IP電話には「050」から始まる番号しか使えず、通常の加入電話の電話番号は使えないサービスもあるので注意が必要です。

携帯電話

携帯電話料金の削減アイデアは2つです。

定期的なプランの見直し

携帯電話も定期的なプランの見直しが必要です。契約台数によって料金も異なるので価格交渉してみましょう。また、携帯業界は変化が激しい業界でもあります。1年ごとに他社比較しながら検討することも大切です。

MVNOを利用する

MVNO(Mobile Virtual Network Operator)とは、無線通信回線をNTTドコモなどの携帯電話会社から借りて格安SIMを提供する事業者のことです。ほとんどのMVNOは、大手通信キャリアよりも安いので、格安SIMに変更することで経費削減につながります。
格安SIMに変更すると、月額利用料金が約50%安くなることもあると言われるほど違いがあります。

交通費

交通費の経費削減には2つのコツがあります。

部門ごとに費用の上限額を設定

業務内容により必要な交通費は異なるので、部門ごとに分けて上限金額を設定しましょう。

適正水準を超える場合は注意喚起する

交通費の利用に無駄がないかしっかり管理することも重要です。適正水準を満たさない部門や社員には注意を促すことや、業務フローの改善を促す必要があります。

振込や決済に掛かる手数料

取引先への支払いの際の振込手数料や、ECサイトを運営するときの決済手数料を削減する方法は3つあります。

ネット銀行を活用する

ネット銀行は店舗を持たないため、都市銀行よりも手数料が安いのが特徴です。例えば、3万円以上の振込で比較した場合、ネット銀行から他の銀行への振込手数料は200円程度で済みますが、都市銀行から他の銀行へ振り込むと手数料は500円を超えてきます。

アクワイアラへ手数料率の交渉を行う

アクワイアラとは、国際ブランドからライセンスを取得して加盟店の開拓や審査、管理を行う機関のことです。ECサイトなどを運営しており、クレジットカードの決済手数料が大きな負担になっている場合は、アクワイアラへ手数料率の交渉をしてみるのも手です。

決済代行会社に切り替える

同じくECサイトなどを運営しており、現在の決済手数料が決済代行会社の手数料の市場価格よりも高い場合は、決済代行会社への切り替えを検討してみてください。
決済代行会社のシステムを導入することで、さまざまな決済管理を一元化できる上に、決済のためのシステム開発費も削減できることがあります。

消耗品

消耗品は、経費削減を検討するのに必須と言える費目です。消耗品費の削減には2つのコツがあります。

相見積もりを取る&価格交渉

消耗品も現行で取引している通信販売会社に対して価格交渉をしたり、他社と比較して相見積もりを取って検討することが重要です。まずは、現行の取引先に割引率を上げてもらうよう交渉してみることから始めましょう。

分散発注からまとめ買いに改善

文具などの消耗品はインターネット通販を利用してみましょう。インターネット通販で価格を比較してからまとめ買いするのが消耗品を安く手に入れるコツ。まとめ買いすることで割引率を上げて消耗品の単価を小さくすることが可能です。

複合機・コピー機

プリンター、コピー機、及び複合機は、必要な印刷枚数や機器台数によって適正価格が異なります。

相見積もりを取る&価格交渉

自社の印刷状況を明確に可視化して必要な台数などを把握してから相見積もりや価格交渉を行いましょう。

カラー印刷の抑制

カラー印刷は、一般的にモノクロ印刷の約5倍のコストが掛かるとされているので、なるべく抑制するのがコツです。無駄にカラー印刷を利用していないか見直しましょう。
機器の印刷枚数や台数などの把握だけでなく、印刷する際のカラー・白黒の比率なども可視化して把握する必要があります。比率を把握したら、使用基準を策定しモニタリングしましょう。

ペーパーレス化

ITツールの活用などにより、ペーパーレス化を行って印刷自体を抑制すると大幅な経費削減が見込めます。

クラウドサービス

現在利用しているクラウドサービスの見直しも、視野に入れてみましょう。

使用していないクラウドサービスの停止を検討する

業務の目的が終了しているのに起動したままになっている不要なクラウドサービスはないか、使用状況の見直しが必要です。

必要最小限の容量のクラウドサービスを選ぶ

異なるクラウドサービスで重複した業務を行っていないか、業務内容の把握と必要な容量を確認し、自社の規模に適した必要最小限の容量のクラウドサービスを利用しましょう。また、現在利用しているストレージプランが適切かどうかを見直し、ダウングレードができれば経費削減につながります。

クラウドコンサルティング会社を利用する

クラウドコンサルティング会社を利用すると、クラウドサービス会社と直接契約するより安価に導入できる場合があります。サービスやコンサル会社によって異なりますが、メリットとしては最適なスペックのサーバーを選択できることがなどが挙げられます。また、監視体制が備わっていることからコストの可視化が可能です。

業務効率化による経費削減アイデア

アイデアのイメージ

業務を効率化することで、結果的に経費削減につなげることもできます。

業務をマニュアル化して経費削減

業務をマニュアル化することとで経費削減できることがあります。具体的には、下記のような方法です。

  • 業務マニュアル(手引き)を作成して業務の進め方を統一する
  • 経費削減のためのマニュアルを作成する

業務自体をマニュアル化することで、従業員自身が無駄な作業に気づくことができます。また、経費削減マニュアルがあることで、従業員の経費に対する意識が変わり、経費削減が期待できます。
また、業務マニュアルがあることで、新人教育のためのコストや不要な作業のために増員した人件費の削減に効果をもたらす可能性もあります。

IT技術の導入によるペーパレス化で効果的に経費削減

大幅な業務効率化と経費削減を実現するには、AI-OCRツールなどのIT技術を積極的に導入してペーパーレス化するのが有効です。IT技術の導入により、具体的には下記のような改善が可能です。

例)

  • 領収書、請求書、契約書などの書類をデジタル化して管理する
  • FAXの受注発注をデジタル化してPCで管理する
  • 外注先との請求書のやりとりをデータで行う など

IT技術を活用した施策は、単なる経費削減だけではなく、生産性の向上を図ることも考慮して自社に必要な機能を見極めてツールを選ぶことが重要です。

経費削減して企業の成長につなげよう

今回は、経費削減を考える上での基礎や注意点、アイデアを紹介しました。まずは、自社にどのような経費削減が必要か、分析を基に判断する必要があります。適切な方法で経費削減を実行できるよう、今回の記事を参考にしてください。

<この記事のポイント>

  • 経費を固定費と変動費に分けて考えるところから始める
  • 費目別に見る経費削減アイデアには、賃料や光熱費、電話料金など小さな経費から大きな経費までたくさんある
  • 従業員の経費に対する意識を変えることも、経費削減の近道

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