契約書は郵送で! 郵便法にのっとった送り方と知っておくべきマナー
契約書を先方に郵送する際、法律で定められたルールがあることをご存じでしょうか?
当記事では、契約書を適切に郵送する方法やビジネスマナー、送付状や封筒の書き方例などをまとめてご紹介します。
契約書を送達できるのは基本的に日本郵便のみ
荷物を配達する手段は多数ありますが、契約書の送達(送り届けること)が法律で認められているのは、基本的に日本郵便のみです。
それは、契約書は総務省の定義する「信書」に当たるためです。
【信書とは?】
受取人に対して差出人の意思を表示したり、事実を通知するための文書のこと。
(信書に該当する文書例:請求書、申請書、契約書、確定申告書など…)
郵便法第4条には、他人の信書の送達業務を行うことができるのは日本郵便に限るという内容が記されています。
つまり、契約書は日本郵便のサービスを利用して郵送する必要があるのです。
その他の宅配便やメール便で契約書を送ると違法になってしまうことがあるので注意しましょう。
ちなみに、信書に該当するのはあくまで契約書の原本です。例として、契約書の写し(コピー)を本店から支店へ送るなどの場合は、信書に該当しないため上記の郵便法は適用されません。
例外として、総務省の許可を得た民間企業が行う「信書便」もある
信書である契約書を送る手段は日本郵便による郵送のみと前述しましたが、例外として、「信書便」を利用する方法があります。
【信書便とは?】
総務省から許可を得た民間企業が、信書に当たる文書の送達を行うサービスのこと。
信書便は、2003年に施行された信書便法(民間事業者による信書の送達に関する法律)によって定義されました。
一般信書便と特定信書便があり、サイズなどの規定が異なるため、信書便を利用して契約書を送る際は信書便事業の許可を得ている企業のウェブサイトなどで確認するようにしましょう。
契約書を郵送する主な手段
契約書を郵送する主な手段と送料をまとめました。
①「普通郵便」で郵送する
定形郵便物 | |
---|---|
25g以内 | 84円 |
50g以内 | 94円 |
定形外郵便物(規格内料金) | |
50g以内 | 120円 |
100g以内 | 140円 |
150g以内 | 210円 |
250g以内 | 250円 |
500g以内 | 390円 |
(出典: 第一種郵便物 手紙|日本郵便株式会社 より作成)
普通郵便のメリットは送料が安く、手軽なことです。しかし、追跡サービスがなく配達記録も残らないため、重要なビジネス文書である契約書を送る方法としてはあまり推奨されません。
②「レターパック」で郵送する
レターパックライト(郵便受けへ配達) | |
---|---|
4kg以内(厚さ3cm以内) | 370円 |
レターパックプラス(対面配達) | |
4kg以内 | 520円 |
(出典: 第一種郵便物 手紙|日本郵便株式会社 より作成)
レターパックは、A4ファイルサイズの書類を比較的低価格で送ることができる便利なサービスです。
どちらも全国一律料金で、レターパック用の封筒はコンビニで手に入れることもできます(※)。インターネットを使った追跡が可能なため、契約書の郵送にも適しています。
勘違いされがちですが、ライトとプラスの大きな違いは、交付記録サービスが付いているかどうかです。また、重量の違いはありませんが、ライトは厚さ3cmまでの荷物となります。
ライトが郵便受け投函なのに対し、交付記録付きのプラスは対面渡しで受領印(またはサイン)を徴収するシステムになっています。
レターパックは海外への郵送はできないのと、損害賠償の対象にはなりません。
※取り扱い状況は店舗により異なります
③「書留」で郵送する
一般書留(引き受けから配達完了までの過程を全て記録) | |
---|---|
損害要償額10万円まで | 基本料金+435円 (損害賠償額5万円ごとに+21円) |
簡易書留(引き受けと配達完了を記録) | |
損害要償額5万円まで | 基本料金+320円 |
(出典: 書留|日本郵便株式会社 より作成)
書留は、重要度の高い契約書などの書類を郵送するのに適した方法です。郵便サービスの中でも特に厳密に管理され、万が一送付物に何か起きてしまった際には、原則として損害賠償を受けることができます。
一般書留と簡易書留の主な違いは、補償額と記録の範囲です。
一般書留は、引き受けた(郵便物を受け取った)郵便局・時間と、配達完了した郵便局・時間に加え、経由した郵便局などの情報もすべて記録されます。これに対し、簡易書留は引き受けと配達完了の情報だけが記録されます。
文字通り簡易的な記録にはなりますが、料金も一般書留よりは安く使い勝手が良いため、契約書の郵送に簡易書留がよく使われているようです。
契約書の郵送に便利な「特定記録」とは?
普通郵便の場合、追跡サービスがなく配達記録が残らないと前述しましたが、例外として「特定記録」のサービスを付与する方法があります。
【特定記録とは?】
普通郵便などに付与できるサービスのこと。引き受けの記録が残り、インターネットを使った配達状況の追跡が可能になる。
特定記録を利用すると、引き受けの証明として受領証を受け取ることができ、受領証の番号から追跡サービスを利用できるようになります。
料金は、基本の郵便料金+160円です。
特定記録は書留と似ているようですが、以下の点が異なっています。
- 配達は郵便受け投函(対面渡しではない)
- 配達完了記録が残らない(引き受け記録のみが残る)
- 土曜、日曜、祝日の配達は行わない(速達とした場合および配達日指定で日祝日を指定した場合などを除く)
- 損害賠償は対象外
契約書を郵送するのに配達証明は不要ですが、差し出した(送った)記録だけは残したい場合などには便利でしょう。
ちなみに、特定記録や書留は速達サービスとの併用も可能です。
契約書を郵送する際のビジネスマナー
契約書を郵送する際の一般的なマナーや注意点をご紹介します。
契約書は折らずにクリアファイルに挟んで封筒へ
契約書は重要な書類なので、一般的に折り曲げて郵送するのは好ましくないとされています。
配達途中で契約書が折れたり、しわになってしまうのを防ぐためにもクリアファイルに入れて送るようにしましょう。
手紙などによく利用される長3封筒だと契約書を折る必要があるため、A4のクリアファイルがすっぽり入る角2封筒や角A4封筒を利用するのがおすすめです。
契約書にはお礼を述べた送付状を同封する
契約書を郵送する際は、併せて送付状を同封するのがマナーです。
【送付状の書き方例】
送付状は、日付・宛名・差出人(自社)・本文・内容物などが記されたシンプルな文書です。本文には取引に対するお礼を述べた挨拶文や、契約書に捺印後1部返送してほしい旨などを必要に応じて記載しましょう。
送付状は添え状・案内状・カバーレターとも呼ばれ、インターネットで検索するとテンプレートがたくさん見つかるので、参考にしてください。
切手を貼った返信用封筒を同封する
契約の締結をスムーズに行いたいのであれば、返信用封筒を同封するのがベターです。
返信用封筒にはあらかじめ切手を貼り、宛名の部分には自社名と担当者名を明記しておきます。その際、宛名(自社名)の下に「様」ではなく、「行」もしくは「宛」を使うのがマナーです。
通常、返信用封筒は郵送時の封筒と同じサイズを利用するので、2つに折り曲げて入れても構いません。
もし、それよりも小さいサイズの返信用封筒を同封する場合は、返信する契約書の折り方(3つ折りにして封入~など)についても送付状に記載しておくと親切でしょう。
契約書を郵送する際の封筒の書き方
内容物の準備が全て整ったら、封筒に入れて郵送します。
【封筒の書き方例】
封筒の宛名は印象を左右するため、ポイントを抑えて丁寧に記載しましょう。
- 切手はできるだけすっきりと見えるように枚数を少なくする
- 住所は郵便番号枠の右ラインに揃え、枠から1文字分下げて書き始める
- 住所は略さず都道府県やビル名まで全て記載する
- 番地には漢数字を利用する
- 社名は(株)などと略すことなく、住所の頭より1文字分下げて書き始める
- 名前は大きな文字で、1文字分下げて書き始める
- 宛名が会社名だけの場合は「御中」、担当者名まで入れる場合は「様」を用いる
- 「契約書在中」と記載する
基本的には、一般的な形式にのっとっていれば横書きでも問題はありませんが、契約書をはじめとするビジネス文書は縦書きの方が無難です。
裏面には差出人(自社)の住所と名前を書き、左上または右上に漢数字で封かん日を書くとさらに丁寧な印象になります。
封をした後は、「〆」などの封締めを記載しておきましょう。
レターパックなどを使用する際は、送り状の品名の箇所に「契約書在中」と記載します。
契約書は適切な方法で郵送しよう
契約書送郵送には、法律上のルールとビジネス上のマナーとがあります。信用や企業イメージにも繋がるため、ルールとマナーの両方に注意を払って行いましょう。
また、契約書を郵送するには手間もコストも掛かります。テレワークをする企業も増えてきているので、電子契約もおすすめです。
データ化された契約書のやり取りをオンラインですれば、郵送するための出社も手間もなく、送料も掛かりません。また、電子契約書であれば収入印紙も不要になるため、コスト削減につなげることもできるでしょう。
<この記事のポイント>
- 契約書=信書のため、送達できるのは基本的に日本郵便のみ
- 契約書の郵送方法は書留、レターパックなどが適している
- 郵送の際は送付状や切手を貼った返信用封筒を同封するのがマナー