経常利益の意味とは? 純利益・営業利益との違いや計算方法を解説

経常利益の意味とは? 純利益・営業利益との違いや計算方法を解説

「経常利益」は、損益計算書に記されている5つの利益のうち全体的な経営成績が反映されやすい勘定科目です。

今回は、経常利益とはどのようなものなのか、意味や計算方法、他の利益との違いなどについて分かりやすく解説します。

石動総合会計法務事務所代表 石動龍様

【この記事の監修者】
石動龍

石動総合会計法務事務所代表

青森県八戸市在住。公認会計士、税理士、司法書士、行政書士。読売新聞社記者などを経て、働きながら独学で司法書士試験、公認会計士試験に合格。ドラゴンラーメン(八戸市)店長、ワイン専門店 vin+共同オーナー、十和田子ども食堂ボランティアとしても活動している。趣味はブラジリアン柔術(黒帯)と煮干しラーメンの研究。2021年中の不動産業開業が目標。
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経常利益とは?

経常利益とは、企業が通常行っている事業の中で経常的に得ている利益のことです。決算書のうち損益計算書(P/L)の利益の中では3番目に記されており、企業の経営状態や実力を表す重要な勘定科目です。

ちなみに「経常」とは、常に一定の状態で続くことを意味します。そのため、通常では発生しない一過性の儲けや損失については反映されません。

一方で、経常的であれば本業以外の事業で得た収益や損失も含まれるという特徴があります。例えば、本業は小売業である企業が、本業以外に不動産投資を行っている場合などです。所有している建物の家賃収入などの所得があれば、反映させる必要があります。

経常利益とその他利益との違い

損益計算書に記されている利益は、一般的に「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」の5つに区分されます。

そのうち、経常利益と混同されやすいものに「営業利益」と「純利益」がありますが、これらには明確な違いがあります。

それぞれの意味と、損益計算書のどこに記されているかについてまとめたので参考にしてください。

売上総利益

売上総利益は、「粗利」とも呼ばれ、売上高から売上原価を差し引いた金額のことです。損益計算書の中では一番最初に記されており、企業の基礎的な利益と言えます。

営業利益

営業利益とは、売上総利益から販売費及び一般管理費(販管費)を差し引いた金額のことです。販管費には、商品を売るための人件費、広告宣伝費、家賃光熱費などが含まれます。

損益計算書の中では2番目に記されており、企業が本業で得た儲けを表しています。これに本業以外の損益を加減したものが、経常利益となります。

税引前当期純利益

税引前当期純利益とは、経常利益に特別利益を加え、特別損失を差し引いた金額のことです。

この場合の「特別」は経常とは反対の意味で、臨時的に発生した損益を指します。例えば、特別利益には固定資産の売却などで得た利益など、特別損失には自然災害などによって発生した損失などが該当します。

税引前当期純利益は、損益計算書の中では4番目に記されています。

当期純利益

当期純利益は、「純利益」とも呼ばれ、税引前当期純利益から法人税などを差し引いた金額のことです。つまり、企業が年度内に得た全ての収益から全ての出費を除いたものが当期純利益となります。

損益計算書の中では5番目に記されており、最終的に企業に残ったお金を表しています。

経常利益の計算方法

経常利益は、以下の計算式を使って求めることができます。

経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用

売上総利益から営業利益を割り出し、そこに営業外収益を加え、営業外費用を引いた金額が経常利益となります。

営業外収益とは、本業以外の活動で企業が経常的に得ている収益を指し、不動産賃料(不動産賃貸業を除く)、受取利息、受取配当金などがこれに該当します。

営業外費用とは、本業以外の活動で経常的に発生する費用を指し、支払利息、割引料、社債利息などが該当します。

<計算例>
求め方の例として、営業利益が230、営業外収益が40、営業外費用が20のK社があるとします。単位は、百万円です。

営業利益:230
営業外収益:40
営業外費用:20

230 + 40 - 20 = 250

この場合、K社の経常利益は2億5,000万円となります。

計算式は難しいものではないので、意味と併せて出し方を覚えておくとよいでしょう。

経常利益から分かること

データを分析する営業マンのイメージ写真

実際に経常利益の値を見てどのようなことが分かるのか、読み取り方について解説します。

経常利益から企業の実力が分かる

企業の経営状態をチェックする際、最終的に企業の手元に残ったお金を表す当期純利益が重要だと思われるかもしれません。

しかし前述のように、企業の経営状態を見る際に経常利益は大きな参考になります。その理由として、当期純利益には突発的な損失や例外的な収益が含まれていることが挙げられます。

企業本来の経営成績や、前期と比較して業績が伸びているかを判断したいのであれば、イレギュラーな損益を加味した当期純利益を指標にするのはふさわしいとは言えません。

一方、経常的な損益のみが反映された経常利益であれば、企業の実力を的確に把握することができるのです。

経常利益と営業利益から分かること

営業利益が赤字(マイナス)であるということは、本業の経営が悪化している状態が推測できます。

ただし、営業利益は赤字でも、経常利益が黒字である場合、トータルでは不調ではないことが読み取れます。

全体としては黒字ですが、本業の赤字を資産運用などで補っている状態であるため、本業に対してはテコ入れが必要な状況と言えるでしょう。

反対に、営業利益は黒字なのに経常利益が赤字である場合、本業の業績は伸びていても資産運用など他の事業がうまくいっていないことが推測できます。

経常利益と当期純利益から分かること

当期純利益は特別損益も含まれるため、仮に赤字計上されていたとしても一過性のものである可能性もあるでしょう。

当期純利益が赤字でも、経常利益が黒字の場合は、企業の収益力は伸びていると読み取れます。連続して当期純利益が赤字でなければ、一時的な損失により全体の利益はマイナスになったものの、経営状態にさほど大きな問題はないと推測できるでしょう。

反対に、当期純利益が黒字なのに経常利益が赤字である場合、一時的な収益により黒字化しているだけで、肝心の経営はうまくいっていない可能性があります。

経常利益成長率と売上高成長率から分かること

成長率(増加率・伸び率)は、過去から見て数値がどのくらい伸びているかを示す指標のことです。

当期と前期とを比較した経常利益成長率(増益率)は、以下の計算方法で求めることができます。

経常利益成長率(%) = (当期経常利益 - 前期経常利益) ÷ 前期経常利益 × 100

経常利益の成長率は、売上高の成長率と併せて見ることで、企業の成長予測にも役立ちます。

例として、経常利益成長率と売上高成長率が共に増え続けている企業であれば、売上も利益も順調に伸ばしている成長企業と言えます。

もし、売上高成長率は減少しているのに経常利益成長率が増加しているのであれば、売上は伸び悩んでいるものの、販管費などのコストの見直しなどの工夫をして利益を上げている状況だと推測できます。

さらに、どちらも増加傾向で、経常利益成長率の方がより高い場合を考えてみましょう。単に売上のおかげで利益も伸びているのでなく、コスト管理などにも努めていることが推測されるので、有望な成長企業である可能性が高いでしょう。

売上高経常利益率から分かること

「売上高利益率」とは、売上高に対して何%を利益にすることができたのかを表す数値のことです。売上高と経常利益から割り出される「売上高経常利益率」は、企業全体の収益力を表す指標とされています。

売上高経常利益率は、以下の計算方法で求めることができます。

売上高経常利益率(%) = 経常利益 ÷ 売上高 × 100

経営状況を把握するためによく使われる値なので、覚えておくとよいでしょう。

ちなみに、経済産業省では例年、業種別の平均値を公開しています。

2020年の経済産業省企業活動基本調査によると、一企業当たりの売上高経常利益率の平均は4.8%で、製造業は6.0%、卸売業は3.2%、小売業は2.8%とのこと。その他の業種については経済産業省のウェブサイトで確認できるので、参考にしてください。

<参考>
2020年経済産業省企業活動基本調査(2019年度実績)の結果(速報)を取りまとめました (METI/経済産業省)​​

経常利益を活用する場面

企業において、自社の経常利益の値は主に以下のような場面で活用することができます。

  • 賞与原資を算出するための指標として活用する
  • 事業の成果として社外アピールや社員のモチベーションアップに活用する
  • 次年度の経営成績の予測に活用する

ただし、本業が不調である場合にもそれ以外の財務活動などで得た利益で成果を上げているケースがあるため、本業を担当する社員にとっては必ずしもモチベーションアップにつながるものではない場合があります。

経常利益の意味と関係性を正しく理解しよう

経常利益は、本業以外の企業活動を含めた儲けが反映される勘定科目です。

社外からも企業の実力を判断される指標となるため、経営者や経理担当者は経常利益の値について意識しておくことが大切です。

意味や計算方法と併せて、損益計算書に記されているその他利益との関係性を理解し、自社の経営状態の把握や見直しにつなげましょう。

<この記事のポイント>

  • 経常利益とは本業以外も含めた経常的に得られる利益のこと
  • 企業の経営成績や収益力が強く反映される
  • 営業利益と営業外損益を用いた計算式によって割り出すことができる
  • 当期純利益や営業利益と併せて見ることで経営状態の予測ができる

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