売上原価とは? 計算式や業種による違いを徹底解説!

売上原価とは? 計算式や業種による違いを徹底解説!

今さら聞けない損益計算書の一番上にある科目、「売上原価」とは? 売上原価に該当する費用項目は、業種ごとに違いがあるので注意が必要です。複雑に感じるかもしれませんが、基本的な考え方さえ理解していれば実は簡単。今回は、経理初心者の方のために「売上原価」の定義や計算式、業種による違いなどについて解説します。

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石動総合会計法務事務所代表 石動龍様

【この記事の監修者】
石動龍

石動総合会計法務事務所代表

青森県八戸市在住。公認会計士、税理士、司法書士、行政書士。読売新聞社記者などを経て、働きながら独学で司法書士試験、公認会計士試験に合格。ドラゴンラーメン(八戸市)店長、ワイン専門店 vin+共同オーナー、十和田子ども食堂ボランティアとしても活動している。趣味はブラジリアン柔術(黒帯)と煮干しラーメンの研究。2021年中の不動産業開業が目標。
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売上原価とは? 粗利を知るための重要な科目

売上原価とは、売れた商品の仕入れや製造に直接的に掛かった費用のことです。商品が売れたタイミングで計上します。ポイントは、売れ残り商品の原価は売上原価に含まれないことです。

売上原価の計算方法

売上原価が小さければ小さいほど、売上総利益(粗利)は大きくなり、会社の利益は大きくなります。会社の利益に大きく影響するので、計算式を知っておくことは必須です。

▼売上原価の計算式
売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期商品仕入高 - 期末商品棚卸高
・例)80万円 = 20万円 + 90万円 - 30万円

ちなみに、売上高に占める売上原価の割合を示す売上原価率の計算式は下記の通りです。

▼売上原価率の計算式
売上原価率 = 売上原価 ÷ 売上高 × 100

売上原価率は収益性を示す指標で、売上原価率が小さければ小さいほど、総利益率は大きいと言えます。

売上原価の記帳方法

売上原価は、損益計算書では重要な科目とされ、粗利を把握するために不可欠な要素です。粗利は下記のように求められます。

▼粗利の計算式
粗利 = 売上高 - 売上原価(期首商品棚卸高 + 当期商品仕入高 - 期末商品棚卸高)

売上原価の記帳は主に「三分法」で行います。この場合、「仕入」「売上」「繰越商品」で仕訳します。

製造原価と売上原価の違い

製造原価と売上原価の違い

製造原価と売上原価の大きな違いは、製造原価は「製造に掛かった費用」を対象としており、売上原価は「販売にかかった費用」を対象としていることです。

製造原価は3つに分類

製造原価は、大きく「材料費」「労務費」「経費」の3つに分類されます。

「材料費:材料だけでなく製造に必要な消耗品などの費用も含まれる
労務費:商品の製造に関わった従業員の賃金
経費:材料費や労務費に含まれない、棚卸減耗費や電気代といった費用

材料費については、製品を作る際に使用されるネジなどの部品も含まれます。労務費については福利厚生費なども含まれます。

これらの3つの項目に分類して製造原価を計算することで、製造原価を抑えるには何を改善すべきか分析できます。

また、さらに製品に「製造直接費」と呼ばれる直接掛かる費用と、「製造間接費」と呼ばれる間接的に掛かる2つの費用に分けて、材料費・労務費・経費をそれぞれ掛け合わせて6種類に分類する方法もあります。

製造原価は直接費と間接費で原価を分類

直接費と間接費を分ける必要性があるのは、例えば材料費などです。材料費は、製造に直接掛かった直接費と、製造にあたって、どれだけ消費されたのか判別しづらい間接費に分けられます。

直接費と間接費に該当する費用の具体例は、下記の通りです。

▼直接費
・原材料
・機械操作のための労務費
・外注費 など

▼間接費
・製品の製造に関わる機械の減価償却費費
・福利施設負担額、減価償却費や光熱費、貸借料、保険料 など

直接費と間接費に分類する時、「製品」に掛けた原価と売り上げた「商品」に掛かった原価は、区別することがポイントです。

「売上原価=製造原価」になる場合も

自社に販売部門がなく製造のみ責任を負う製造業の場合は、人件費も製造原価とされることから、「売上原価=製造原価」になる場合があります。

一方で、販売部門がある場合は、人件費は販管費になり、製造原価ではなく売上原価に含まれるため、売上原価と製造原価はイコールの関係にはなりません。

つまり、業態にかかわらず販売部門があれば人件費の一部は販管費になり、製造原価に含まれないものの売上原価には含まれることになります。

売上原価に該当する費用項目は業種ごとに違う

売上原価に該当する費用項目は業種ごとに違う

業種により売上原価とされる費用項目は異なります。なぜなら、業種によっては光熱費や労務費、人件費などが売上原価とされる場合があるからです。特に、「人件費」には注意が必要です。業種別に詳しく解説します。

【小売業】人件費は該当しない

一般的に、小売業では仕入れに掛かった費用である仕入れ代が売上原価に該当します。人件費は全額「販売費及び一般管理費」とされます。

前述で、売れ残り商品の原価は売上原価に含まれないことがポイントとお伝えしましたが、小売業の場合は、「売れ残り商品」についても、売上原価として計上される費用が2つあります。

①棚卸しを実施して判明した在庫ロス分の原価
②売れ残り商品の評価損

なお、評価損が多額である場合は、特別損失に計上することもあり得ます。

在庫ロス分の原価とは

在庫ロスとは、例えば、在庫管理表では100円の商品が10個あるはずなのに、棚卸しを実施した時に8個しかなかった場合、在庫の差異2個のことを示します。

在庫ロスは、検品・棚卸・返品・発送・不良品の報告漏れ、または事務処理上の人為的なミスなどが原因で生じることがあります。

ロス原価の計算は下記の通りです。

▼ロス原価の計算式
ロス原価 = 原価 × ロス個数

100円の商品の原価が60円、在庫ロス2個であれば、ロス原価は60円×2個=120円となります。

在庫商品の評価損とは

売れ残った在庫商品の評価損(棚卸資産評価損)とは、在庫商品を金額で示す在庫評価のことで、期末決算時に「低価法」を採用した場合に算出されます。

低価法とは、期末の時価と帳簿価額を比較し、棚卸資産を評価する方法のひとつですが、在庫を金額として示す評価基準の方法は2つあります。

原価法:在庫の取得原価を基に評価額を計算する
低価法:原価法による評価額と期末時損価のうち低い方を評価額として計算する

原価法とは、原価である仕入価格などを基に棚卸資産を評価する方法です。

一方で、低価法の場合は、期末の時点で在庫商品に損傷や変色などが原因で品質低下していることが発覚して、当初の帳簿の価格を下回った場合、期末の価格で在庫の棚卸資産を評価します。

帳簿価格と比較して評価額が下がった分の差額が発生しますが、その差額を費用として計上します。

【飲食業】人件費や光熱費が該当することも

飲食業の売上原価は、基本的に材料に掛かった費用が該当します。しかし、飲食業と一口に言っても、小規模の個人店からセントラルキッチンを保有する大手チェーンまであります。そのため、人件費や光熱費も、売上原価に含まれるケースがあります。

なお、それぞれ掛かった材料についての売上原価は、「期首材料棚卸高+当期材料仕入高-期末材料棚卸高」で計算します。

【サービス業】外注の人件費は該当

サービス業の場合、一般的に自社の社員の人件費は販売費及び一般管理費に計上します。サービス業は多岐に渡る業種と業態があることから、販売業と修理業でも違いがあります。

例えば、販売業の場合は、外注でも雇用でも販売費及び一般管理費で計上することが多くあります。修理業の場合は、事務スタッフは販売費及び一般管理費、現場スタッフは雇用でも外注でも売上原価に計上することがあります。

【建築・製造業】光熱費・労務費・人件費も該当

製造業で販売部門や事務部門を有していない場合、材料費だけでなく加工に直接的に掛けた労務費や光熱費などが製造原価となり、最終的に売上原価に振り替えられます。

また、製造に直接携わっていない生産管理や品質管理などの間接労務費も、製造経費に含まれるため、最終的に売上原価に含まれることとなります。

製造を行う従業員の人件費は「製造費用」とされ、販管費ではなく最終的に売上原価に分類されます。ただし、人件費は注意が必要です。

製造に直接掛かった外注費の場合は、製造直接費として、最終的に売上原価に含まれます。一方で、製造や建設に直接関わっていない人件費は製造間接費となり、「配賦」する必要があります。

配賦とは、各部署に費用を振り分けることです。企業の規模が大きいと、各部署に横断して掛かる費用が発生するので、この振り分けが必要とされます。

粗利を把握するために売上原価の正しい理解は必須

粗利を把握するために重要な要素である売上原価。売上原価とは何かを正しく理解することは基本です。たとえ同じ人件費や光熱費でも、業種や業態によって売上原価とされる場合とされない場合があるので、今回の記事を参考にしてみてください。

<この記事のポイント>

  • 売上原価とは粗利を算出するために必要不可欠な科目
  • 売上原価とされる費用項目は業種や業態ごとに違う
  • 製造業の売上原価と製造原価には違いがある
  • ただし、「売上原価=製造原価」になる場合もある

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