消費税法とは? これまでの改正内容や課税対象・計算方法などをおさらい
消費税法は、消費税の対象となる取引や税の負担者、税率などを定めた法律です。近年軽減税率や総額表示が導入されたように、これまで度々改正を重ねてきました。
この記事では、消費税法のこれまでの改正内容や税額の計算方法を詳しく解説します。2023年に始まる「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」についても、今のうちに押さえておきましょう。
消費税法とは
消費税法とは、消費税の対象となる取引、税の負担者と納税者、税額の計算方法などについて定められた法律です。1988年に成立して以降、税率や特例措置の変更などに伴い改正を重ねて現在に至っています。
これまでの消費税法の改正内容
2019年に、消費税率の10%への引き上げと軽減税率制度の導入が実施され、2021年には総額表示(消費税額を含めた税込価格を表示すること)が義務付けられたように、消費税法は度々改正されています。近年行われた改正内容を確認してみましょう。
2020年4月の改正では「法人に係る消費税の申告期限の特例の創設」「居住用賃貸建物の取得等に係る消費税の仕入税額控除制度の適正化」「住宅の貸付けに係る非課税範囲の見直し」「高額特定資産である棚卸資産等について調整措置の適用を受けた場合の納税義務の免除の特例の制限」「輸出物品販売場制度の見直し」が行われました。
2021年4月の改正では「課税売上割合に準ずる割合の適用開始時期の見直し」「郵便物として輸出した場合の輸出証明書類の見直し」「金又は白金の地金の課税仕入れを行った場合に保存する本人確認書類の見直し」が行われています。そして、2022年4月の改正では適格請求書(インボイス)発行事業者の登録手続など「消費税の適格請求書等保存方式に係る見直し」が行われる予定です。
消費税の仕組み
消費税の課税対象・納税義務者について説明します。
消費税が課税される取引・非課税取引
消費税の課税対象となる取引は「国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡」「国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の貸付け及び役務の提供」です。つまり、対価を得て行う取引は基本的に課税の対象となります。
なお、外国から商品を輸入する場合は、輸入の際に課税されます。一方で「土地の譲渡、貸付け(一時的なものを除く)」「有価証券、支払手段の譲渡」「利子、保証料、保険料」のように、社会政策的な配慮などから課税対象外となる取引もあります。
納税義務者(課税事業者)・免税事業者とは
納税義務者とは、消費税の納税義務がある事業者を指します。納税義務者となる条件は、課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円を超える場合です。基準期間における課税売上高が1,000万円以下でも、特定期間の課税売上高が1,000万円を超える、且つ特定期間における給与等支払額が1,000万円を超えた場合は、その課税期間においては課税事業者となります。なお、特定期間とは、個人事業者の場合はその年の前年の1月1日から6月30日まで、法人の場合は原則としてその事業年度の前事業年度開始の日以後6カ月を指します。
一方、基準期間の課税売上高及び特定期間の課税売上高が1,000万円以下の場合は免税事業者となり、その年(または事業年度)の納税義務が免除されます。ただし、免税事業者でも消費税課税事業者選択届出書の提出により課税事業者となることが可能です。
消費税の軽減税率
酒類・外食を除く飲食料品と、定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞には、軽減税率(8%)が適用されます。外食やケータリングなどは軽減税率の対象外ですが、テイクアウトや飲食料品の宅配などは対象です。
軽減税率については、こちらの記事もご参照ください。
軽減税率とは? いつまでなのかや対象品目、インボイス制度への準備について解説
消費税の計算の仕方
消費税の計算方法を、国税・地方税のそれぞれで確認しておきましょう。
国税の場合
消費税を納付する方法には、簡易課税と原則課税があり、事業者はどちらかを選択します。それぞれ計算式が異なります。
原則課税
原則課税は、以下の式で算出します。
計算式
課税期間中の課税売上に係る消費税額-課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額=消費税額
なお中小事業者の場合、売上税額は2023年9月30日までの期間は税額計算の簡易課税制度の特例が設けられています。
簡易課税制度
簡易課税制度とは、中小事業者の納税事務負担を軽減する目的から、売上に係る消費税額を基礎として仕入れに係る消費税額を算出できる制度です。基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が事前に届出書を提出している場合に利用できます。
計算式
課税期間中の課税売上に係る消費税額-(課税期間中の課税売上に係る消費税額×みなし仕入率)=消費税額
課税期間における課税売上に係る消費税額に、事業区分に応じた一定の「みなし仕入率」を掛けた金額を課税仕入れなどに係る消費税額とみなして、消費税額を計算します。
みなし仕入率
第1種事業(卸売業):90%
第2種事業(小売業等)小売業、農林漁業(飲食料品の譲渡に係る事業):80%
第3種事業(製造業等)農林漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)、建築業、製造業など:70%
第4種事業(その他)飲食店業など:60%
第5種事業(サービス業等)運輸通信業、金融・保険業、サービス業:50%
第6種事業(不動産業):40%
簡易課税制度については、こちらの記事もご参照ください。
消費税の簡易課税制度とは? メリット・デメリットや原則課税との違いを解説
地方消費税の場合
地方消費税とは、各都道府県や自治体に払い込まれる消費税です。
以下の式で算出します。
計算式
消費税額×地方消費税率=地方消費税額
仕入税額控除を受けるための要件
仕入れの際にかかった消費税額を控除するには、区分経理を行い帳簿・請求書などを保存する必要があります。現行の制度は2023年に終了するため注意してください。
2023年9月までは「区分記載請求書等保存方式」
課税事業者が仕入税額控除の適用を受けるには、区分経理に対応した帳簿及び「軽減税率の対象品目である旨」や「税率ごとに区分して合計した税込対価の額」などが記載された請求書(区分記載請求書等)を保存しておかなければなりません。
免税事業者は仕入税額控除は受けられませんが、課税事業者と取引した際に区分記載請求書等の交付を求められることがあります。
2023年10月からは「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」
適格請求書(インボイス)とは、「売手が買手に対して正確な適用税率や消費税額等を伝えるもの(電子データを含む)」を指し、一定の事項を記載した帳簿及び「適格請求書」などの保存が仕入税額控除の要件となります。
適格請求書の様式は定められておらず、請求書・領収書・レシートなど名称を問いませんが、区分記載請求書等保存方式より記載事項が増えているため注意が必要です。
適格請求書等保存方式については、こちらの記事もご参照ください。
インボイス制度とは? 2023年の導入に向けて、概要や必要な準備を解説
消費税の申告・納付方法など
確定申告・中間申告と納付方法などについて解説します。
確定申告と納付
個人事業者は翌年の3月末日まで、法人は課税期間の末日の翌日から2カ月以内に消費税と地方消費税を併せて所轄税務署に申告・納付します。
納付方法は、以下の5つです。
- 電子納税(e-Tax)
- 振替納税
- クレジットカード納付
- コンビニ納付
- 窓口納付
控除不足還付税額のある還付申告書を提出する場合、消費税の還付申告に関する明細書を添付しなければなりません。
中間申告と納付
直前の課税期間の消費税額が48万円を超える事業者は、中間申告と納付を行う必要があります。直前の課税期間の消費税額が48万円超400万円以下の場合は年1回の中間申告を行い、直前の課税期間の消費税額の2分の1を納付します。
同様に、400万円超4,800万円以下の場合は年3回の中間申告と確定申告で4分の1ずつ、4,800万円超の場合は年11回の中間申告と確定申告で12分の1ずつ納付します。納付方法は確定申告と同様です。
こんな場合は届出が必要
基準期間の課税売上高が1,000万円を超えるなど一定の事由が発生した場合、事業者は届出をしなければなりません。届出が必要な事由と必要な届出書、提出時期については下表をご参照ください。
事由 | 届出書 | 提出時期 |
---|---|---|
基準期間の課税売上高が1,000万円を超えることとなったとき(又は1,000万円以下となったとき) | 消費税課税事業者届出書(基準期間用)(消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書) | 速やかに |
特定期間の課税売上高が1,000万円を超えることとなったとき | 消費税課税事業者届出書(特定期間用) | 速やかに |
資本金の額又は出資の金額が1,000万円以上の法人を設立したとき | 消費税の新設法人に該当する旨の届出書 | 速やかに |
免税事業者が課税事業者を選択するとき(又は選択を取りやめるとき)(注1) | 消費税課税事業者選択(不適用)届出書 | 選択しようとする(選択をやめようとする)課税期間の初日の前日まで |
簡易課税制度を選択するとき(又は選択を取りやめるとき)(注1) | 消費税簡易課税制度選択(不適用)届出書 | その適用を受けようとする(適用をやめようとする)課税期間の初日の前日まで |
課税期間の特例を選択又は変更するとき(又は選択を取りやめるとき)(注1) | 消費税課税期間特例選択・変更(不適用)届出書 | 同上 |
「法人税の確定申告書の申告期限の延長の特例」の適用を受ける法人が、消費税の確定申告の申告期限を延長しようとするとき(又は適用を受けることをやめようとするとき) | 消費税申告期限延長(不適用)届出書(注2) | その適用を受けようとする(適用をやめようとする)事業年度終了の日の属する課税期間の末日まで |
注2:令和3年3月31日以後に終了する事業年度終了の日の属する課税期間から適用されます。
(画像引用:消費税のしくみ|国税庁)
消費税法の改正内容はこまめにチェックしよう
消費税法は、これまでも度々改正されてきました。2022年は、適格請求書等保存方式における適格請求書発行事業者の登録手続などについて改正が行われる予定です。
2023年10月より、いよいよインボイス制度が始まります。大きな制度変更に向けて、いま一度消費税法を確認しましょう。そして、適格請求書(インボイス)をデジタル化できる電子インボイスの導入もぜひ検討してみてください。各作業が効率化され、手間や経費を軽減できます。
消費税法やインボイス制度についてしっかり理解を深めて、準備を進めていきましょう!
<この記事のポイント>
- 消費税法は、課税対象・納税者・税額の計算方法などについて定めた法律
- 税率の変更や軽減税率導入など、度々改正が行われてきた
- 仕入税額控除を受けるための要件は、2023年に変更される(インボイス制度)