収支報告書とは何か? テンプレートで作り方のコツを分かりやすく解説
会社の飲み会や懇親会などのお金の出入りを管理するために、収支報告書を作ることがあります。決算報告書よりも簡単な構成ですが、会社にとっては重要な情報源の一つとなっています。どんな項目を書いたらいいのでしょうか。また、何に注意したらいいのでしょうか。テンプレートも紹介しつつ、作り方を分かりやすく解説します。
収支報告書とは何か
収支報告書は、特定の活動の収支状況をまとめたものです。貸借対照表や損益決算書のような作成義務はありません。しかし、会社の予算が割り振られている場合、会社のお金の流れの一部に関するものであるため、重要な書類の一つとなります。
収支報告書を作る目的
収支報告書は、お金の活用状況や収支のバランスを確認するために作成します。収支報告書を社内で作るのは特定の社内イベントや部活動などについてが考えられます。こういった活動は、参加者から会費を集めたり、会社から予算が割り振られたりします。
ここで大事なのは「集めたお金や会社から割り振られたお金がどう使われたか」です。活動目的に関係なく費消されたり、使途が不明だったりすると、お金を出す側は不安になります。原資が会社のお金なら、会社の経費にできず、最悪、重加算税が会社に科される恐れがあります。また、使い込んだ本人も賞与として課税されるリスクがあります。
こういった不安やリスクを払拭し、より良い活動につなげるために収支報告書は必要なのです。
決算報告書との違い
収支報告書と名称が似ているものに決算報告書があります。両者は、次の3つの点で異なります。
1つ目は、作成義務があるかどうかです。決算報告書は会社法や税法など、法律で作成が定められています。一方、収支報告書は法律で作成を義務付けられていません。
2つ目は、記載する範囲です。決算報告書は、損益計算書や貸借対照表といった複数の書類から構成されます。会社の損益状況や財産状況の他、株主資本の移動状況なども記載しなくてはなりません。しかし、収支報告書は、特定の活動の現金の流れを書けば十分です。
3つ目は、開示する相手です。決算報告書は社内だけでなく、金融機関や株主、税務署など外部の関係者にも開示しなくてはなりません。一方、収支報告書は飲み会や部活動の参加者や上司など、内部の関係者にしか見せません。
収支報告書を作る場面
会社の中で収支報告書を作るのは、主に次のような場面です。
- 懇親会
- 飲み会
- 部活動
- その他、特定のイベント
短期間の活動についてお金を集めたり、予算が割り振られたりしたとき、お金の流れを明確にするために作成します。
収支報告書の記載内容
収支報告書には所定の様式がありません。そのため、表計算ソフトや文書作成ソフトで作成しても構いません。ただし、書き方や記載項目には特徴があります。
「現金の収支」が基本
収支報告書には、基本的に、現金での収入や支出を書きます。預貯金や電子決済を使うこともあるかもしれませんが、これらも全て現金として記載します。決済手段の種類ではなく、お金の流れ全体を明らかにすることが重要です。
記載すべき事項
収支報告書には、主に次のような項目を記載します。
記載する項目 | 書き方の例 |
---|---|
対象となる期間 | イベント実施の期間など 「自〇年4月1日 至4月30日」 |
対象期間における収入総額 | 例:「収入の部 10万円」 |
対象期間の収入の内訳 | 前回または前期からの繰越金、会費、雑収入など 「会費 8万円 雑収入2万円」 |
対象期間における支出総額 | 例:「支出の部 6万円」など |
対象期間の支出の内訳 | 消耗品費、交際費、飲食費、会場費など 「飲食費 5万円 交通費1万円」 |
概要、摘要、内容、備考 | 収入や支出の明細、目的など細かい説明 |
前年度(あるいは前期、前回)繰越金 | 前年度(あるいは前期、前回のイベント)から繰り越したお金 |
次年度(あるいは翌期、次回)繰越金 | 次年度(あるいは翌期、次回のイベント)に繰り越すお金 |
予算金額 | 予算が設定されていたら予算額を記載 |
対予算増減 | 実際の収入・支出金額から予算額を引き、プラスかマイナスかを記載 |
なお、金額は円単位で記載します。表で作成するなら欄外に「単位:円」と書くと、表中の金額の記載は数字だけで済みます。
参考にする資料
収支報告書を作成するときは、レシートや領収書などを参考にします。もし、こういった証憑書類がなければ、金額のメモを残しておくといいでしょう。
現金出納帳に収入や支出をその都度書いておき、そこから収支報告書を作るのでも構いません。ただし、できるだけレシートなどは保管しておきます。飲食店や小売店など、第三者が出した証憑書類が最も客観性が高いからです。
テンプレートで確認!収支報告書のポイント3つ
ここで収支報告書を作成するときのポイントを見ていきましょう。テンプレートを見ながら確認します。
ポイント1:細かくしすぎない
ポイントの1つ目は、項目の記載を細かくしすぎないことです。ていねいに書くことは大事ですが、細かくし過ぎると内容が分かりにくくなります。説明は備考欄などに書きましょう。
ポイント2:期間と場面を明確に
収支報告書の対象期間や活動の名称を記載しましょう。「いつからいつまでの分なのか」「どのイベントのものなのか」が書かれていないと、見る側が混乱するかもしれません。
ポイント3:備考欄や欄外を活用する
項目だけでなく、備考欄や欄外も活用しましょう。「会費」「飲食費」といった項目で、お金の流れは分かります。ただ「何人参加していくら集めたのか」「1人当たりいくら掛かるのか」が書いてあれば、より明確になります。繰り越す残高の予定が欄外に記載してあれば、次回以降、予算を立てやすくなるはずです。
収支報告書を作るときの注意点
収支報告書を作成するときは、次の点に注意しましょう。
残高は必ず照合する
飲み会や懇親会などでは、限られたお金の中でイベントを行います。そのため、たいていの場合、黒字になり、残高があるはずです。残高があったら、報告書上の数字と手元現金が合っているかどうかを確認しましょう。
また、もし赤字になったのなら、損失の額もきちんと書き、誰が補てんしたのかも書いておきましょう。
監査を意識する
特定のイベントで会社の予算が割り振られた場合、イベントでの費用はそのまま会社の費用となります。そして、この費用は会社の決算書の中にも組み込まれ、会計監査の対象となります。会社の状況によっては、収支報告書も監査対象となるかもしれません。決算や監査も意識しながら作成しましょう。
保存期間に注意
会社の会計書類は、会社法や税法で保存期間が定められています。収支報告書は、会社法の定めのない書類ですが、法人税法により、7年保存しなくてはなりません。会社のお金が割り当てられた飲み会や懇親会の収支報告書やレシートは、捨てずに保管しましょう。
収支報告書は目的を理解して分かりやすく作成しよう
収支報告書は、決算報告書と違い、作成が義務付けられた書類ではありません。書式も自由です。だからといって、適当に作成すると、お金の流れや使い道が明確にならず、お金を出した会社側や参加メンバーに不信感を与えてしまいます。
特に、会社の予算が割り振られているなら、使ったお金は会社の経費となります。状況によっては、会計監査で収支報告書がチェック対象になるかもしれません。また、使途が不明だと、会社の資金繰りや信用に悪影響を及ぼす恐れがあります。
「内々の書類だから」で済ませず、今回お伝えした項目やテンプレートを見ながら、分かりやすく書くように心掛けましょう。
<この記事のポイント>
- 収支報告書で書くのは「現金の流れ」
- 項目や概要欄を活用して分かりやすく作ろう
- 現金の実際有高と帳簿残高合っているかを確認しよう