接待交際費が経費になる上限額は? 会議費との違いや書き方も解説

接待交際費が経費になる上限額は? 会議費との違いや書き方も解説

取引先との会食やお中元などの贈答は、重要な企業活動の一つです。こういった活動の経費は通常「接待交際費」として処理されますが、中には別の勘定科目になるものもあります。また、法人税法上の経費に算入できる金額には上限があります。接待交際費になるかどうかの判断基準や経理処理のポイントについて、事例を交えながら解説します。

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税理士・税務ライター 鈴木まゆ子様

【この記事の執筆者】
鈴木まゆ子

税理士・税務ライター

2000年中央大学法学部法律学科卒業。(株)ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て、2012年税理士登録。税金の正しい知識を広めるべく、WEBを中心に多数の記事執筆・税務監修を行う。分かりやすい解説に定評がある。共著「海外資産の税金のキホン」(税務経理協会、信成国際税理士法人・著)。
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接待交際費とは?税法上の上限額を確認

接待交際費とは、得意先や仕入れ先など事業の関係者に対する食事の提供や謝礼、贈答などの費用のことです。租税特別措置法第61条の4第6項では、次のように定義しています。

“交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下「接待等」といいます。)のために支出するものをいいます。”

<引用>No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算(国税庁)

取引先とのゴルフや旅行、贈答の他、接待に伴うタクシー代なども接待交際費になります。

法人税では原則「全て損金不算入」

原則、接待交際費は全額損金に算入されません。「損金」は法人税法上の経費のことをいいます。仕訳で経費に計上した接待交際費は、法人税の計算の際、所得に加算します。

期末の資本金額・出資金額で損金算入できる上限額が変わる

「全額損金不算入」が原則ですが、例外的に一定額まで損金に算入できます。上限額は期末資本金額または出資金額により異なります。

期末資本金額または出資金額 損金算入限度額
1億円以下(中小法人) 次のいずれか選択適用
・年800万円まで損金算入
・接待飲食費×50%まで損金算入
1億円超100億円以下 接待飲食費×50%まで損金算入
100億円超 なし(全額、損金不算入)

なお「接待飲食費」は、飲食に関するものだけです。

1人当たり5,000円以下の飲食費は全て損金算入できる「5,000円基準」

接待飲食費が1人当たり5,000円以下であれば、全額を損金に算入できます。1人当たり5,000円以下かどうかは、次の式で判定します。

<画像引用>「交際費等(飲食費)に関するQ&A」平成18年5月(国税庁)

この扱いは、全ての法人に共通です。

【まとめ:接待交際費の法人税法での扱い】

期末の資本金額または出資金額 1億円以下
(中小法人)
1億円越100億円以下 100億円超
法人税法での接待交際費の扱い いずれか選択適用
年800万円以下の接待交際費:損金算入 飲食接待費×50%まで損金算入 飲食接待費×50%まで損金算入 接待交際費:全額損金不算入
50%を超えた飲食接待費:損金不算入 50%を超えた飲食接待費:損金不算入
年間800万円超の接待交際費:損金不算入 50%を超えた飲食接待費:損金不算入 50%を超えた飲食接待費:損金不算入
飲食接待費以外の接待交際費:損金不算入 飲食接待費以外の接待交際費:損金不算入
1人当たり5,000円以下の飲食接待費:損金算入

接待交際費と他の経費はどう違う?

飲食や贈答が接待交際費だとは限りません。他の経費になることもあります。

福利厚生費や給与との違い

社内だけの飲食は、接待交際費になることもあれば、福利厚生費になることもあります。支出額が常識の範囲内であり、かつ、従業員等におおむね一律に行われるものならば、福利厚生費となります。「総務部だけの打ち上げ」など、一部の役員・社員に対するものや支出が多額なものは、接待交際費です。

なお、支出の内容が一役員や一従業員の個人的なものは、給与となります。役員ならば役員賞与、従業員ならば給与です。従業員の給与は損金に算入できますが、役員賞与は損金になりません。また、いずれも所得税の源泉徴収が必要です。

会議費との違い

飲食は接待の他、打ち合わせや会議でも行われます。商談や打ち合わせ、研修のときの飲食で、支出額が昼食や夕食の範囲内ならば、会議費となります。

取引先など外部との飲食だけでなく、社内会議での飲食も会議費です。会議室でのランチや茶菓、弁当代も会議費に含みます。

広告宣伝費との違い

贈答であっても、消費者や取引先への販売促進や知名度向上など、広報活動の一つならば広告宣伝費です。得意先に対する見本品やカレンダーなどの送付、不特定多数の者に対するイベント招待券やプレゼントなどが当てはまります。

ただし、抽選であっても得意先を対象とする招待券やプレゼント、あるいは自社製品でも特定の者に高額な品を贈与する場合なら、接待交際費となります。

寄附金との違い

取引先に贈る金品も、接待交際費の一つです。ただし、状況によっては寄附金になることがあります。

今後の取引の円滑化や何らかの見返りを期待して金品を贈ったら接待交際費です。取引先の社長に渡す香典や祝い金は接待交際費になります。

しかし、見返りを期待せず、一方的に贈与するものは寄附金です。事業に関係のない相手への金品や、事業に関係する相手でも直接事業に関係しない支出が該当します。取引のない相手への贈与や合理的な理由のない資金提供は、寄附金に計上します。なお、寄附金にも損金算入限度額があります。

「接待飲食費?会議費?」経理処理の注意点

接待交際費で注意したいのは、飲食費の扱いです。客観的な証拠を残さないと、損金算入できなくなります。社内の飲食費も要注意です。

飲食の領収書は6つの記録の徹底を

飲食接待費が生じたら、次の6つの記録を必ず残しましょう。

1. 飲食年月日
2. 接待した得意先や仕入先の名称とその関係、参加者名
3. 参加した人数
4. 飲食費の額
5. 飲食店の名称、住所
6. その他飲食費であることを明らかにする事項(例:接待、会議など)

1人当たり5,000円以下の飲食費については、これらの事項を書類に記録します。書類とは、レシートや領収書、経費精算書などです。

50%損金算入できる飲食交際費については、帳簿に記録を残します。帳簿になるのは、総勘定元帳の他、飲食店からもらうレシートなどです。

社員が取引先と飲食するときは、レシート裏に取引先名や参加人数、目的を書いてもらいましょう。

帳簿も書類も7年間保存

記録を残した書類や帳簿は、7年間保存します。この保存がなければ、5,000円基準も50%損金算入も適用できません。贈答などと同じく、通常の接待交際費として扱われます。

摘要の書き方

摘要の書き方に決まりはありませんが、分かりやすく書きましょう。摘要に何も書いていなかったり、あるいは店名しか書いていなかったりすると、「接待交際費なのかそれ以外か」「飲食なのかそれ以外なのか」といった判断がしにくくなります。

摘要は、次のように書くとよいでしょう。

例1)取引先3社にお中元を贈った→「お中元 ○○社、△△社、□□社」
例2)取引先A社の担当者3人と接待のためレストランで飲食をした→「レストラン〇〇にて接待 A社○○様他2名」

送付先や参加者が多かったり、摘要欄に書き切れなかったりするならば、「○○社他2社」「○○様他1名」などと書いても構いません。ただし、内容が正しいかどうかを必ず確認してください。

社内飲食費には5,000円基準も50%損金算入もない

「経理部だけの打ち上げ」「役員だけの食事会」のように、一部の役員や従業員だけの飲食は接待交際費です。このような社内飲食費は、5,000円基準や50%損金算入の対象ではありません。「飲食以外の接待交際費」に区分されます。

接待交際費の仕訳の書き方

接待交際費の仕訳の書き方を、以下で確認しましょう。当社の期末資本金は1億円、支払いは全て現金払いとします。

例1

決算の打ち上げにより、経理部だけでレストラン○○で飲食した。経理部メンバーは5人、飲食代は計20,000円だった場合

借方 貸方 摘要
接待交際費 20,000 現金 20,000 レストラン○○ 経理部決算打ち上げ

飲食は、経理部だけで行われています。打ち合わせのためでもないので接待交際費となります。なお、1人当たり4,000円ですが、社内の飲食なので5,000円以下基準や50%損金算入の対象になりません。

例2

取引先A社の担当者3人(B氏、C氏、D氏)を居酒屋△△で接待した。当社の社員は1人。飲食代は計18,000円だった場合

借方 貸方 摘要
接待交際費 18,000 現金 18,000 居酒屋△△にて接待
A社B氏他2名 5,000円以下/人

「18,000円÷4人=4,500円≦5,000円」なので、5,000円基準を満たし、全額損金に算入できます。仕訳だけで5,000円基準を判断できるなら、「5,000円以下/人」などの表記は不要です。

なお、5,000円基準で全額を損金算入するには、取引先名や参加人数などを記録した書類の保存が必要です。

例3

取引先E社の担当者2名(F氏、I氏)を観劇に接待した。タクシー代も自社で負担した。観劇代は40,000円、タクシー代は5,000円だった場合

借方 貸方 摘要
接待交際費 20,000 現金 20,000 観劇代 E社F氏他1名
接待交際費 5,000 現金 5,000 観劇に伴うタクシー代
E社F氏他1名

タクシー代も接待交際費です。観劇代と別に仕訳をしましょう。

接待交際費は上限額や用途に応じて正しく経理処理しよう

接待交際費で注意したいのは、他の経費との混同です。参加者や金額、目的によって変わります。接待交際費の判定は慣れないと難しいものです。迷ったら、経理部門の上司や先輩、顧問税理士に確認しましょう。

<この記事のポイント>

  • 接待交際費の法人税法上の経費算入には限度がある
  • 接待交際費と他の経費の違いに注意しよう
  • 飲食費は金額や参加者などにより勘定科目が異なる

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