経営計画書を作成するメリットは? 書き方や活用方法も解説
創業して会社の規模が大きくなったときに役立つのが経営計画書です。会社の経営理念や目標、計画を社長と従業員で共有すれば、経営計画を達成しやすくなります。ただ、初めてだとどういう手順で作成し、何を書いたらいいかが分からないものです。そこで今回、作成のポイントやメリットを確認しながら作り方を確認していきます。
経営計画書とは何か
経営計画書とは、会社が今後どういう姿を目指し、達成していくのかを示すものです。創業期を経て、ある程度の規模になった会社に求められます。
経営計画書が必要な理由
創業当初の会社は成長が著しいものです。規模が小さいので、社内でこまめに相談や確認、報告や意見交換ができます。ゼロから売上や利益を立てるので、目標も分かりやすく、やる気が出ます。
しかし、従業員数が10人以上になると、こういったことが難しくなります。業務が増え、社長と従業員、従業員同士で密なコミュニケーションを取るのが容易でなくなるからです。また、売上や利益が安定するので、気持ちが緩みやすくなることもあります。この段階になると、やる気や根性ではなく、回す仕組みが必要です。
ここで会社の成長を促しつつ業務を回していくのが経営計画書です。経営理念や経営戦略、数値目標を経営計画書で明確にすれば、社長と従業員それぞれが使命感を共有し、目標を持って業務に取り組めます。
事業計画書との違い
経営計画書に似ているものに、事業計画書があります。いずれも会社の経営には必要ですが、作る目的や書く要素が異なります。
経営計画書は、会社全体の方向性を示すものです。そのため、長期的な視野に立って、方針や戦略、計画を明確にします。
一方、事業計画書は、特定の事業を成功させるための具体的な道筋を示すものです。経営計画書よりも短い期間を前提に目標や計画が策定されます。経営計画書の内容を実現するための1つのステップにすぎません。
大学受験に例えると、それぞれの模試で上位10位以内に入るための勉強計画が「事業計画書」、志望校に合格するための長期的な計画が「経営計画書」となります。
経営計画書の活用場面
経営計画書が最も活用されるのは社内です。経営計画書は、経営理念や長期戦略、目指す将来像を従業員に意識させてくれます。長期の経営目標の達成を目指す場面や従業員の育成の場面で、経営計画書は有用です。
また、社外の利害関係者にも活用できます。例えば、持続的な「小規模事業者持続化補助金」を申請するときは、経営計画書の提出が必要です。
経営計画書を作るメリット
経営計画書の作成には、次の3つのメリットがあります。
経営の持続化と信用力の強化
経営計画書は、事業計画書と違い、長期的な視野に立って会社経営の方向性を示すものです。当然、経営理念や使命といったものも経営計画書に盛り込まれます。
利益と損失だけで行う会社経営は長続きしません。事業が損得だけの話になると、会社全体の姿勢が倫理観やモラルに欠けたものになりがちです。最終的には社会的な信用を失い、経営に行き詰まる恐れがあります。
しかし、経営理念などで、社会における会社の存在意義が明確になれば、従業員も使命感を持って業務を行えます。結果、会社の信用力が高まり、長期的な成長を促せます。
目標を達成しやすくなる
経営計画書に書くのは数値目標だけではありません。目標を達成するための具体的な戦略も入れます。戦略でゴールに到達するための方法を示せば、数値目標を達成しやすくなります。
社内の連携強化
数値目標のみでは社内の連携は弱まります。業務を行う意義や手順が分からないため、従業員の行動がバラバラになるからです。一方、経営理念や具体的な戦略が示されれば、従業員が同じ目標のために協力しやすくなります。
経営計画書の書き方
経営計画書は、次の項目と手順を押さえて作成します。
経営計画書に書く項目
経営計画書に書く内容は自由です。ただ、最低限、次の4つは記載しておいたほうがいいです。
- 会社概要
- 経営理念
- 経営目標・計画
- 経営戦略
経営計画書を作る手順
経営計画書の作成手順の例は、次のようになります。
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自社の歩みと現在を洗い出す
会社概要の他、商品やサービス、顧客への姿勢、創業の動機、内部環境と外部環境、事業や利益の構造、業務の流れ、自社の強み・弱み、業務の手順をざっと書き出します。
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他社の経営理念と比較しながら経営理念を作成する
経営理念は、経営計画書に明記されます。自社で考えた表現がベストとは限りません。よりふさわしい表現が他にあるかもしれないのです。そこで、他社の経営理念を確認し自社と比較した上で、経営理念として書くべき言葉を再検討します。
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経営目標と計画を作成する
経営理念を実現するための具体的な目標と計画です。売上高、営業利益といった数値で書きます。過去の財務諸表と業務の行い方から見直し、「無理はないが少し頑張れば達成できる数値」を3年先まで設定するといいでしょう。
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経営戦略を立てる
経営戦略とは、経営目標を実現するための行動の仕方を定めたものです。1で見直した業務の流れから、顧客の情報管理や営業の手法、社内コミュニケーションを仕組み化します。「この仕組みを回せば目標に近づく」といえるものが理想です。
いずれも従業員と一緒に行いましょう。誰もが納得するものでなければ実行されません。
経営計画書の記入例
ここで経営理念と経営目標のサンプルを見てみましょう。まず経営理念です。
会社の目指す姿や使命、信念や価値観を表します。分かりやすい言葉を使い、時代の変化に耐え得る表現を選びましょう。
次に経営目標です。
過去の財務諸表を振り返りながら現実味のある数値を掲げます。期間の目安はだいたい3~5年分です。売上だけでなく、利益にも着目しましょう。工夫で減らせるコストがあるかもしれません。
経営計画書の活用方法
経営計画書は、活用してこそ効果があります。次の3つを意識しましょう。
月次試算表と照らし合わせる
経営計画書の数値目標は、定期的に月次試算表の数値と照らし合わせて確認しましょう。「思ったよりも成果が出ない」というのであれば、目標に無理があるか、戦略に工夫すべき点があるのかもしれません。
発表やテストの場を設ける
経営計画書は、社長と従業員の業務遂行上の指針となるべきものです。日頃から経営計画書を読み上げたり、テストしたりする場を設けるといいでしょう。「社内研修の最初の5分で読み合わせる」など、数分で確認する機会を設けるのも1つの方法です。
定期的に見直す
経営環境の変化はここ最近、激しいものです。3年先まで作ったものの、2年目で目標や計画が陳腐化するかもしれません。定期的に見直し、現時点の景気や経済の流れに見合うものかどうかを確認しましょう。また、コロナ禍のように予測しない事態が生じたときも見直しが必要です。
経営計画書は会社経営を左右する
経営計画書は、一定規模までに成長した会社の今後を左右するものとなり得ます。上手に活用すれば、社内をつなぐコミュニケーションツールになります。目標と道筋が的確なら、成長を促す起爆剤となります。
経営計画書は、社長と従業員が一緒に作成しましょう。作成したら定期的に見直し、行動が経営計画書の内容と合っているかどうかを確認しましょう。
<この記事のポイント>
- 経営計画書は「コミュニケーション」の1つである
- 経営計画書で社内外の連携が強まる
- 作りっ放しにせず、活用するのが大事である