在庫管理とは何か? メリットと効率化の方法も確認しよう

在庫管理とは何か? メリットと効率化の方法も確認しよう

在庫管理は、卸売業や小売業、製造業など多様な業種で欠かせない重要なプロセスです。在庫を上手に管理すれば、在庫に掛かるコストを減らせるだけでなく、利益率アップや生産性の向上につながります。適切な在庫を保有するには、発注の段階から注意しなくてはなりません。
今回は、在庫管理の意義やメリット、効率化の方法について解説します。

税理士・税務ライター 鈴木まゆ子様

【この記事の執筆者】
鈴木まゆ子

税理士・税務ライター

2000年中央大学法学部法律学科卒業。(株)ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て、2012年税理士登録。税金の正しい知識を広めるべく、WEBを中心に多数の記事執筆・税務監修を行う。分かりやすい解説に定評がある。共著「海外資産の税金のキホン」(税務経理協会、信成国際税理士法人・著)。
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在庫管理とは?

在庫管理とは、商品や製品、材料などの数量が適切になるようにすることです。人によっては「最近は在庫を持たない事業もあるから、最初から抱えないほうがいいのでは?」と思うかもしれません。しかし、在庫を持つことには理由があります。

在庫とは何か

在庫とは「将来販売したり、製造に使ったりするときに備えて所有しておくもの」を言います。小売業や卸売業なら、倉庫や陳列棚にある商品、製造業なら製造に用いる材料や製造中の仕掛品、そして製造が済んでこれから出荷する製品が在庫です。

在庫が必要である理由

インターネットが発達し、オンデマンドでモノが買える時代なのに、なぜ在庫が必要なのでしょうか。それは「機会損失の防止と顧客満足度の向上につながるから」です。

在庫を抱えずに販売できても、受注して商品や製品が顧客の手元に届くまでに時間が掛かります。入手までに時間が掛かるなら、顧客は別のお店に行くかもしれません。受注しても、後日キャンセルされることもあります。販売の機会を失わないために、「欲しいと思ったときにすぐ提供する」ことが大事です。

また、在庫があれば、顧客は目や手で商品や製品を確認し、納得した上で購入できます。もし購入した商品や製品が不良品だったら、すぐに交換することも可能です。在庫は、顧客満足度を上げるという点でも有意義なのです。

在庫管理の目的

何のために在庫を管理するのでしょうか。それは「在庫の品質や数量を管理することで、所有しすぎることによる損失を減らすため」です。

在庫は顧客の需要に応え、満足度を上げるためには必要なものです。しかし、抱えすぎは損失につながります。この「損失」とは、廃棄による損失、廉価販売による損失、そして在庫の管理コストの膨張による損失を言います。

しかし、在庫管理を適切に行えば、こういった損失を防ぎ、かつ販売すべきときに販売できるようになるのです。

在庫管理のメリット

在庫管理を適切に行うと、次のようなメリットがあります。

余剰在庫が減る

あまり売れないのにたくさん発注すると、在庫が過剰になります。これを余剰在庫と言います。余分な在庫は、劣化しがちです。結果として、廃棄や廉価販売せざるを得なくなり、利益が減少します。しかし、在庫管理を徹底することで、余剰在庫を減らし、利益を改善することができるのです。

欠品防止につながる

売れ行きがいいのに発注した品数が少ないと、品薄や欠品につながります。売って利益を得るチャンスを失ってしまうのです。しかし、在庫管理を行えば、こういった販売機会の損失を防げます。

コスト削減

先ほどお伝えした通り、在庫を所有すれば、その分管理にコストが掛かります。不良在庫や過剰在庫が生じれば、廃棄や廉価販売で損失が生じます。ここで在庫管理を適切に行えば、こういったコストを減らし、会社全体の利益を上げることが可能です。

生産性向上

在庫をきちんと管理し、必要な数だけ必要なときに発注をすれば、最小限の労力で発注業務を行うことができます。在庫の管理にもあまり手間が掛かりません。結果、管理や販売における生産性が向上します。

需要予測ができる

在庫管理を適切に行うには、需要予測が必要になります。過去のデータから「どんなときにどんな商品が売れ、どんな商品が売れないか」を把握できれば、在庫の数に無駄がなくなります。在庫管理を適切に行うプロセスで、需要予測が可能となるわけです。

在庫管理を効率化する3つの方法

在庫管理を効率良く行うには、次の3つがポイントとなります。

在庫の「見える化」

発注数が過剰あるいは不足になるのは、在庫の状況を把握できていないことも一因です。また、整然と並んでいないと、在庫の数と状態を間違って把握していることもあります。

そこで大事なのが、在庫の「見える化」です。在庫を決められた場所にルールに従って分かりやすく置き、すぐに取り出せるような状態に保てば、どこに何がどれだけあるかがすぐに分かります。この他、品出しのルールや数量の表を書いて貼っておく、掃除や整理を定期的に行うなども有効です。

在庫を重要度でクラス分けする

在庫の内容を分析し、重要度順に扱いを変えることも重要です。金額、商品価格、利益率、回転率などを指標にし、在庫を次の3つに分類します。

A…在庫量を増やすようにする。欠品が生じないよう重点管理する。
B…在庫量は現状維持を心がける。定期的に発注するか、欠品が生じたときに発注する。
C…在庫は減らすようにする。欠品が生じてから発注する。

このように分けて発注の頻度や量をコントロールすれば、在庫が適量になるだけでなく、利益を生みやすくなります。

適切な発注

在庫は販売時だとコントロールできません。需要は思うようにいかないからです。在庫管理を効率良く行うには、コントロールしやすい発注時がカギとなります。

適切な発注のポイントは、「発注のタイミング」と「発注する量」です。「定期的に発注するか、それとも不定期で発注するか」「1回ごとの発注量を決めておくか、または状況を見て判断するか」を状況によって使い分ければ、自然と適切な在庫に落ち着きます。

在庫管理で使えるツール

適切な在庫管理には、ツール選びも重要です。ここでは、3つのツールをご紹介します。

① 在庫管理表

1つ目は在庫管理表です。例えば、次のような表を作成します。

これ以外に、会社にとって加えたい重要な指標があれば加えます。紙で用意してファイルに挟んだり壁に貼ったりしてもいいでしょう。ただ、IT技術が発達している今は、紙よりも次の2つのほうがいいでしょう。目で見てすぐ把握できるメリットがありますが、手計算のミスを防ぐことや、効率的に管理することには向いていません。

② 表計算ソフト

先ほどの在庫管理表を表計算ソフトで作成するのもいいでしょう。次のような形になります。

計算式を組み込めば自動的に在庫残高などが算出されます。必要に応じて、商品の構成比や利益率なども算出できます。手書きの紙と違って計算は楽ですし、大きなコストも掛かりません。ただし、入力ミスなどといったヒューマンエラーを完全には防げません。

③ 在庫管理システム

効率良く、柔軟に在庫を管理するなら在庫管理システムを利用するといいでしょう。在庫商品の基本情報を扱う「在庫商品マスタ」や、単品ごとのデータを蓄積する「在庫・出荷データ」、発注サイクルごとに適切な発注量を計算するシステムを用いれば、可能な限り過不足のない発注で在庫をコントロールできます。手間が掛からず生産性も向上しますが、システム代にコストが掛かります。

在庫管理一つで利益率が変わる

在庫管理は、コストや損失の額に直結します。言い換えると、在庫管理一つで会社の利益が変わるのです。売上がどんなに上がっても在庫管理が適切でないと、利益率は上がりません。逆に、売上が上がらなくても在庫管理を徹底し、損失を減らせば、その分利幅が厚くなります。また、生産性向上にもつながります。

在庫管理のポイントを押さえ、利益率や生産性向上につなげましょう。

<この記事のポイント>

  • 適切な在庫を持つのが在庫管理の目的である
  • 在庫管理一つで利益率が変わる
  • 在庫管理の効率化も生産性向上につながる

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