【2021最新】電子帳簿保存法の改正ポイントと要件まとめ。メリットやデメリットは?
2020年に施行された、改正電子帳簿保存法。最近ではテレワークの浸透により、さらにペーパーレス化が進んでおり、2022年1月にはさらに条件緩和となる改正が行われます。
今回は、電子帳簿保存法とは何かということから、これまでの法改正の内容、今後改正されるポイント、電子帳簿保存するメリット・デメリットまでを解説します。また、電子帳簿をクラウドで一元管理できる請求書サービスについても紹介します。
電子帳簿保存法とは?
電子帳簿保存法とは、保存義務者が仕訳帳等の帳簿や請求書等の書類などの「国税関係帳簿書類」を電子データによる保存(電磁的記録)やスキャナ保存することを認めた法律です。
例外はありますが、国税関係書類の電子帳簿保存には、可視性や記録の真実性の観点から、所轄税務署長などに申請をして承認を受けなければなりません。
電子帳簿保存法の改正ポイント|2019年以前
電子帳簿保存法は、これまでスキャナ保存制度の要件などについて改正・緩和の措置がとられてきました。
2005年には、3万円未満のものについては契約書や領収書であってもスキャナ保存が可能になり、2015年には、3万円以上のものも対象となり、スキャナ保存の電子署名が不要となりました。
また、スキャナの精度向上により、2016年にはデジカメやスマートフォンで撮影したデータが有効となり、領収書や請求書等については、受領者や作成者が読み取る場合、受領後にその者が署名し、3日以内にタイムスタンプを付与することが要件とされました。
そして2019年には、従来3カ月前までの申請が必要だったものが、新たに個人事業主が業務を開始した際、開始日から2カ月を経過する日まで、承認申請書の提出を行うことが可能となり、承認以前の重要書類においても一定の要件のもと電子化できるようになりました。
電子帳簿保存法の改正ポイント|2020年以降
それでは、直近の2020年、電子帳簿保存法の改正で何が変わったかを解説していきます。
2020(令和2年)10月1日に施行された改正電子帳簿保存法では、請求書などのタイムスタンプの条件緩和がなされました。以前は、受領者側のタイムスタンプ(3営業日以内)が必須でしたが、今回の改正により請求書の発行者・経費精算サービス・クラウド・アプリ業者側が発行するタイムスタンプだけで、受領者側は不要になりました。ただし、ユーザー側(受領者)のデータの改変が不可能な場合に限ります。
また、キャッシュレス決済では、完全にペーパーレス化が可能になります。クレジットカードや交通系ICカードなどのキャッシュレス決済の利用明細データが領収書の代わりになり、別途紙の領収書の提出もタイムスタンプも不要です。
このことにより、請求書発行者は「受領者のタイムスタンプ待ち」という、煩わしさから解放され、より効率化が図れるようになります。
ただし、書類が改変できないようなシステム・データを個人で作るには労力や時間がかかります。やはりクラウドの請求書サービスを使うと便利です。
2022年1月には事前承認が不要になる?
2021(令和3年度)の税制改正大網の閣議決定で、今後さらに条件が緩和されることが決まりました。2022(令和4年)年1月には、電子データ保存・スキャナ保存ともに税務署長の事前承認が不要になり、タイムスタンプの付与期間も最長2カ月以内となるなど条件緩和の税制改正が行われます。
電子帳簿保存ができる保存方法
電子帳簿保存法で認められている保存方法は、主に電子データによる保存と、スキャナ保存の2種類があります。
① 電子データ保存
文書作成ソフトや表計算ソフト、クラウドの請求書作成サービスを使って、請求書等の書類を作成し、それらをデータ化し保存する方法です。
② スキャナ保存
スキャナ保存とは、紙で作成した書類をプリンターなどのスキャナ機能で読み取り、データ化する方法です。
電子データ保存ができる書類とできない書類
ペーパーレス化に便利な電子データによる保存ですが、中には、電子帳簿保存法が適用されない書類もあります。電子データ保存が可能な書類と不可能な書類を見ていきます。
電子データ保存が できる書類 |
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電子データ保存が できない書類 |
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スキャナ保存ができる書類とできない書類
スキャナによる保存についても、電子帳簿保存法が適用されている書類と適用されていない書類があります。
スキャナ保存が できる書類 |
契約書、領収書、請求書、レシート、見積書、契約書、納品書など取引先関係(受領分)の証憑類 |
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スキャナ保存が できない書類 |
仕訳表などの帳簿や、貸借対照表、損益計算書などの決算関係書類 |
電子帳簿保存のメリット・デメリットは?
電子帳簿保存はメリットばかりですが、デメリットはないのか気になるところです。ここでは、電子帳簿保存のメリットとデメリットを解説していきます。
メリット① 経費が削減できる
電子データ保存をすれば、紙を出さなくていいので保管場所やコピー用紙などの経費を削減することができます。また、押印や封入作業などの手間がかからないため、バックオフィスの効率化につながります。
メリット② クラウドで操作が可能に
クラウドの請求書サービスなどを使用すれば、電子取引に該当し受領した請求書の電子保存が可能です。また、サービスによっては請求書の発行だけでなく受け取りもできるため、完全なペーパーレス化を実現。リモートでの作業も可能になります。
メリット③ 正確性の向上
クラウドの請求書サービスなら、システムが自動計算してくれるため、計算間違いの心配もありません。データはクラウド上のサーバーに保存されるため、何かあっても復旧しやすいのもポイント。チャットや電話でのサポートもあります。
デメリット 導入費用がかかる
今まで紙ベースで保存していれば、電子保存に慣れるまで時間がかかるかもしれません。また、クラウドを導入する場合、初期費用や月額費用など導入費用がかかります。しかし、費用がかかるといっても、税理士に頼むよりもクラウドで電子帳簿をつけるほうが経費の削減になります。
一般的に税理士に依頼する場合、電話・メール相談で1カ月約3万円、訪問相談で1時間5万円、電子帳簿保存の承認申請書類作成・添付業務などを依頼すると20万〜35万円ほど。個人事業主の方は、少々頼みにくい金額になってしまいます。
電子帳簿保存法の適用要件と申請について
電子帳簿保存は、2021年現在、電磁的記録・スキャナ保存を開始する日の3カ月前までに、「国税関係帳簿の電磁的記録による保存等の承認申請書」と、「申請に係る国税関係帳簿書類に係わる電子計算機処理に関する事務手続きの概要を明らかにした書類」「申請書の記載事項を補完するために必要となる書類その他参考となるべき書類」等の添付書類とともに、所轄税務署長へ提出する必要があります。
ただし、注意点として、2022年1月に税制改正が施され、税務署長の事前承認が不要になります。2021年中に開業・帳簿の記録を開始される方は、申請が必要。事業を始めるのが、2022年1月1日以降という方は事前承認が不要と、税制改正の前後には注意が必要です。
EDI・メール等の電子取引では申請が不要
現行の電子帳簿保存法では、インターネットを用いた電子取引に関しては事前承認が不要です。主に、電子メール・電子契約・EDIのデータが対象となります。
ちなみにEDIとは、電子データの交換のこと。発注・納品・出荷・代金決済などの取引が専用のシステムやインターネットで可能になります。
まとめ
電子帳簿保存法は、ペーパーレス化が進むにつれて条件が緩和されてきました。また、行政の脱ハンコが進み、今後は認め印・会社印などの押印も不要になるものが増えてくることが期待できます。
完全に出社不要のテレワークの導入を検討している企業の担当者や、個人事業主の方は、ぜひこの機会にクラウド請求書の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
<この記事のポイント>
- 電子帳簿保存法とは請求書等の電子データによる保存を認めた法律
- 電子帳簿保存にはコスト削減や正確性向上などのメリット