脱ハンコで何が変わる? 認められている書類や導入するメリットとは

脱ハンコで何が変わる? 認められている書類や導入するメリットとは

現在、テレワークの普及で企業は場所を選ばない働き方への対応が迫られています。なかには、上司や決裁者にハンコをもらうためだけの「ハンコ出社」もあるようです。

今回は、脱ハンコが企業の経営者や管理部門、個人事業主にどのような影響を及ぼすかや、脱ハンコを導入するメリットを解説していきます。

石動総合会計法務事務所代表 石動龍様

【この記事の監修者】
石動龍

石動総合会計法務事務所代表

青森県八戸市在住。公認会計士、税理士、司法書士、行政書士。読売新聞社記者などを経て、働きながら独学で司法書士試験、公認会計士試験に合格。ドラゴンラーメン(八戸市)店長、ワイン専門店 vin+共同オーナー、十和田子ども食堂ボランティアとしても活動している。趣味はブラジリアン柔術(黒帯)と煮干しラーメンの研究。2021年中の不動産業開業が目標。
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脱ハンコとは?

脱ハンコとは、契約書や請求書、稟議書、行政サービスなどで必要とされる押印の廃止に向けた官民一体の取り組みのことを意味します。 2020年に国が脱ハンコに向けて、行政手続きの押印を99%以上廃止すると発表した影響が大きく、パソコンなどで押印作業が完結する「電子印鑑・電子署名」などへの移行が進んでいます。

脱ハンコで何が変わるのか?

感染症対策の一貫で、テレワークを導入している企業は多くなりましたが、ハンコ文化の根付いている日本ではなかなか完全移行が進まないのが現状です。ハンコを押すためやもらうためだけの「ハンコ出社」や、押印ができないために業務が滞るケースがまだあります。

脱ハンコが進むと、押印の手間が省けペーパーレスでのやりとりが可能となり、生産性の向上やテレワーク導入のハードルが下がるなど、企業や個人事業主にとってさまざまなメリットがあります。

行政は9割以上の廃止を目指している

また、同年12月18日には、99.4%の行政手続きにおいて押印を廃止するという具体的なマニュアルを示しました。今後、国民の生活にも大きな影響が出てくるでしょう。直近では、パソコンやスマートフォンを使った確定申告に押印が不要でした。

しかし、一部の手続きにおいては押印が必要なものもあります。

脱ハンコが認められている書類

それでは、どのような行政手続きへの押印が廃止されるのでしょうか。また、廃止されない手続きも確認していきます。

押印の廃止が決まった行政手続き

  • 住民票の写し/戸籍謄本(交付請求)
  • 婚姻届/離婚届/出生届/死亡届
  • 所得税の申告など(確定申告)
  • 児童手当などの受給資格や届け出
  • 自動車(継続する場合の車検)
  • 車庫証明/道路使用許可申請 など

押印が廃止されない行政手続き

  • 不動産登記の申請
  • 商業/法人登記の申請
  • 自動車の新規/移転/抹消登録 など

今まで、多くの手続きにハンコが使われてきましたが、今後は行政手続きがより簡素化されます。2021年1月から自動車の所有権の得喪(新規、移転、抹消登録)に伴わない、住所や姓名などの変更登録は押印が不要となりました。ただし、不動産登記や、自動車の新規、移転、抹消登録に関するものは書類として残すことが決まっているので、今まで同様に実印が必要になってきます。

脱ハンコで企業・個人事業主への影響は?

行政手続きの押印が99.4%廃止されると発表されましたが、民間企業や個人事業主にはどのような影響が出てくるのでしょう。

企業や個人事業主が行政に提出するものといえば、国税関係書類などが代表的。国税関係は、すでに電子帳簿保存法が改正・緩和され、ペーパーレス化が進んでいます。クラウド請求書などを使った電子取引では、ほぼ脱ハンコが可能です。

行政サービスの脱ハンコ・ペーパーレス化が進むにつれて、民間企業もそれに向けて加速。クラウド請求書や電子印鑑への導入を検討するきっかけにもつながります。もちろん、企業のサービスを使っている消費者にもメリットはあり、携帯・ガス・銀行などの契約手続きにも影響が出てくるでしょう。

脱ハンコのメリット・デメリット

脱ハンコのメリット・デメリット

脱ハンコで得られるメリットとデメリットについて解説します。

メリット
  • コスト削減(紙・保管場所など)
  • 業務効率化や生産性向上
  • 改ざんなどのリスクが減りコンプライアンスやセキュリティティー強化につながる
デメリット
  • クラウド導入により業務フローなどの見直しが必要
  • 経理担当や管理職などの手間が省ける一方、配置換えなどの人事異動が必要なことも

脱ハンコでペーパーレス化が進むことで、コスト削減・業務効率UP・セキュリティー対策などの面でメリットがあります。しかし、導入することで、人員削減や配置換えが必要なことも。

脱ハンコには、会社全体での取り組みが大切です。従業員への理解を促し、クラウド請求書や電子印鑑導入を行いましょう。

今後は電子印鑑・電子署名などの電子契約がメインに

今後、ハンコを押す機会は減り、電子印鑑や電子署名などの電子契約がメインになります。法律上、請求書に押印は不要ですが、電子化した請求書にも「正式に発行された書類の証し」として電子印鑑の押印をおすすめします。

電子印鑑は、認印程度であれば文書作成ソフトウェアや表計算ソフトウェア、無料作成ツールなどで簡単に作成することができます。

脱ハンコを進めるなら、クラウド請求書の導入がおすすめ

クラウド請求書サービスを導入し、書類へ電子印鑑を使えば、ペーパーレス化が実現します。
特にテレワーク元年になった、2020年以降はハンコ業務がテレワーク導入の障壁になっているようです。テレワークを導入しても、企業の経理担当や管理職の方は、月や週に数回の出社が必要になり、「外出自粛をしたいのにできない」という悩みのタネにもなったのではないでしょうか。

受け取り側が電子でやりとり可能な請求書を導入しているという条件もありますが、完全なテレワークに向けて、クラウド請求書サービスの導入をおすすめします。

脱ハンコで業務効率化を図ろう!

行政の脱ハンコ宣言は、私たちの生活に影響を与えるものです。また、企業や個人事業主のペーパーレス化を後押ししてくれるものでもあります。

将来的には紙自体のやりとりが完全になくなり、さらには電子印鑑を押すという機会も減るかもしれません。バックオフィス業務は、クラウドで全て完結という時代もそう遠くはないです。

来る時代に備えて、脱ハンコや文書の電子化など今からできることを始めてみてはいかがでしょうか。

<この記事のポイント>

  • 脱ハンコといっても、押印不要が認められている書類とそうではない書類がある
  • クラウド請求書を利用し押印を無くすことで業務効率化を図れる

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