2022年1月施行予定! 電子帳簿保存法の改正に備えよう 改正ポイントを解説

2022年1月施行予定! 電子帳簿保存法の改正に備えよう 改正ポイントを解説

書類のペーパーレス化を進めるためには、電子帳簿保存法について理解する必要があるでしょう。この法律を押さえておけば、適切な方法で書類の電子化を進められます。
2020年12月に税制改正の大綱が公表され、2022年1月より改正された電子帳簿保存法が施行されます。これから対応する企業は、その内容を押さえておきましょう。
そこで今回は、電子帳簿保存法の概要と改正点について紹介します。電子帳簿保存法に対応するメリットや、対応法についても紹介するので参考にしてみてください。

石動総合会計法務事務所代表 石動龍様

【この記事の監修者】
石動龍

石動総合会計法務事務所代表

青森県八戸市在住。公認会計士、税理士、司法書士、行政書士。読売新聞社記者などを経て、働きながら独学で司法書士試験、公認会計士試験に合格。ドラゴンラーメン(八戸市)店長、ワイン専門店 vin+共同オーナー、十和田子ども食堂ボランティアとしても活動している。趣味はブラジリアン柔術(黒帯)と煮干しラーメンの研究。2021年中の不動産業開業が目標。
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電子帳簿保存法とは?

電子帳簿保存法とは、国税関連書類などの重要書類を電子データで保存することを認めた法律です。通常、重要書類は紙の状態での保存が義務づけられていましたが、この電子帳簿保存法が1998年に制定されたことにより、電子保存が可能になりました。
これまでも何度か改正が行われましたが、2005年3月の改正では、紙媒体の書類のスキャン保存も認められるようになりました。電子帳簿保存法で認められている保存方法は、サーバーやDVD、CDなどに保存する「電磁的記録による保存」、電子計算機出力マイクロフィルムによって保存する「COMによる保存」、後は「スキャナによる保存」の3種類です。

電子化できる書類・できない書類

電子帳簿保存法に対応すれば、ペーパーレス化を実現し業務の効率化を図れるでしょう。ただし、全ての書類を電子化できるわけではありません。電子保存が認められる書類は限定されているため、その種類を押さえておきましょう。

電子保存が認められている書類 帳簿 現金出納帳、仕訳帳、経費帳、売掛帳、買掛帳、総勘定元帳、固定資産台帳、売上・仕入帳など
決算関係書類 貸借対照表、損益計算書、棚卸表、その他決算に関する書類など
その他の証憑書類 契約書、請求書、見積書、注文書、レシート、領収書、契約の申込書、納品書、検収書など
電子保存が認められていない書類 手書きで作成した仕訳帳、総勘定元帳などの主要簿
手書きで作成した請求書の写しや補助簿
取引先から受け取った請求書

スキャナ保存できる書類・できない書類

スキャナ保存が
認められている書類
契約書、領収書、請求書、レシート、見積書、契約書、納品書など取引先関係(受領分)の証憑書類
スキャナ保存が
認められていない書類
仕訳表などの帳簿や、貸借対照表、損益計算書などの決算関係書類

2022年施行される電子帳簿保存法の改正点は?

チェックイメージの画像

書類の電子化が進む中、電子帳簿保存法に対応する企業は増えています。2022年1月の主な改正点は、電子帳簿保存法に対応する企業を増やすための要件緩和です。対応を検討している場合は、そのポイントも押さえておきましょう。

承認制度の廃止

従来の電子帳簿保存法を導入するためには、税務署に申請書を提出し承認を受ける必要がありました。申請は3カ月前までに行う必要があり、承認を得られるまでは、導入の準備期間はおおむね半年〜1年ほどの期間がかかっていました。
改正後は、電子データ保存・スキャナ保存ともに事前承認が不要となります。

タイムスタンプ要件の緩和

電子帳簿保存法では、電子データが作成された日時を確定するためにタイムスタンプが必要です。このタイムスタンプがあることで、その日時以降にデータが変更や改ざんされていないことの証明になります。
従来の電子帳簿保存法では、国税関係書類をスキャンする際に受領者が自署し、3営業日以内にタイムスタンプを付与しなければなりませんでした。改正後は、受領者の自署は不要になり、タイムスタンプの付与期間は現行の3日間から最長2カ月とおおむね7営業日以内に変更になります。
さらに、改ざんなどの不正防止のため変更履歴などのログを残せるシステムであれば、タイムスタンプを付与せずにクラウド上での保存が可能になります。
なお、タイムスタンプはスキャナ保存と電子取引のデータにのみ必要で、会計システムなどでデータを作成する場合には不要です。

適正事務処理要件の廃止

従来の電子帳簿保存法では、電子データの事務処理に関して、厳重なチェック体制と定期的な検査が求められます。このチェックには書類の紙原本が必須なので、結局紙の状態の書類を保存する必要がありました。
改正後は、この適正事務処理要件が廃止になり、定期検査まで保存が必要だった紙の原本は、スキャンした後すぐに破棄ができるようになります。
また、チェック体制(相互けん制)も廃止されるため、電子データの事務処理が1人でも可能となります。

検索要件の緩和

従来の電子帳簿保存法では、書類の電子データが必要になったときに、すぐ検索できるよう細かい検索要件を登録・管理する必要がありました。検索機能を確保するための作業が煩雑になりやすく、要件を満たすハードルが高いことが大きな課題になっています。
改正後は、検索要件が「年月日」「金額」「取引先」のみと簡素化を実現しました。そのため、今までよりも電子データを管理するハードルが下がったと言えます。

電子帳簿保存法に対応するメリット

書類を電子化するイメージ画像

電子帳簿保存法に対応できると、社内の業務効率を大幅に改善できます。

書類保管スペースを削減できる

国税関係書類は種類によって保存期間が定められており、基本的には7年間保存しなければなりません。取引先・取引数などが多くなればなるほど、保存する書類は多くなります。
実際に、企業の規模が大きくほとんどの書類を紙で保管している場合、書類を保管するために1つの部屋やフロアを使っていることも。仮に全ての書類を電子化できれば、その分のスペースを削減できます。

書類管理業務の簡素化

紙の状態で書類を保管していると、必要になったときに該当する書類を探す手間が大きくなってしまいます。
書類を電子化すれば、手作業で書類を確認する必要がなくなり、すぐに書類を検索できます。また、電子データにそれぞれ要件を設定しておけば、検索や管理がしやすくなるでしょう。業務効率が高まれば生産性も高くなります。

コスト削減

ペーパーレス化に対応し電子データで書類を作成・保管するようになれば、紙の書類に関するさまざまな費用を削減できます。例えば、大量の紙の費用や印刷するインク代、請求書などを送る際に必要な封筒代や郵送料なども不要になります。
他にも、重要な書類を保管するときには鍵付きのキャビネットが必要です。全ての書類を電子化すればこのキャビネットも不要になり、設備の費用も削減できます。書類の数が多く、保管する専用の部屋があればそのスペースも不要になり、その部屋の家賃も削減できます。

電子帳簿保存法に対応する手段とは?

電子帳簿保存法への対応を検討するイメージ画像

電子帳簿保存法に対応するためには、スキャンで対応するか、システムを導入するかの2種類の方法があります。ここからは電子帳簿保存法に対応する方法について紹介します。

スキャンで対応する

電子帳簿保存法に対応するためには、法律で定められた要件を満たす必要があります。例えば、紙の書類をスキャンしたとしても、電子化した書類の文字が読めなければ意味がないので、必要な解像度なども指定されています。

スキャンする場合の保存要件
機器の種類 スキャナ、スマートフォン、デジタルカメラなど(一定水準以上の解像度・カラー画像による読み取りが可能な機器)
解像度 200dpi相当以上
赤・緑・青の階調がそれぞれ24ビットカラー(256階調以上)

(参照:電子帳簿保存によるスキャナ保存要件|国税庁
また、スキャンして電子化する場合、紙の状態よりも改ざんされる危険性があるため対応する要件が厳しくなっています。主な要件は以下の通りです。

スキャンする場合の保存要件
真実性の確保 スキャンされた書類が真実であるか、訂正・追加・削除の履歴を確認できるようにし、タイムスタンプなどを導入する
可視性の確保 スキャンされた書類と帳簿の内容が一致し、関連性を確保する必要がある
要件を満たしたカラーディスプレイおよびカラープリンターなどを備え付ける
必要なときにすぐ取り出せるように検索ができるようにしておく

(参照:電子帳簿保存によるスキャナ保存要件|国税庁
また、スキャンして電子化する場合、紙の状態よりも改ざんされる危険性があるため対応する要件が厳しくなっています。主な要件は以下の通りです。

会計システムなどを利用する

スキャンした電子データ以外に、会計システムなどを使って作成したデータも電子帳簿保存法の対象になります。
また、検索しやすいように各書類に関わる項目の設定も簡単です。既に紙の書類が存在する場合は、スキャンなどで電子化する必要がありますが、これから発行する書類をシステムを使って電子化することにも大きなメリットがあります。

電子帳簿保存法の対応で注意するポイント

電子帳簿保存法への対応の注意点のイメージ画像

電子帳簿保存法に対応するメリットは多くありますが、対応には大きな負担が生じる場合があるので注意しましょう。

システム導入の負担

電子帳簿保存法に対応するためには、システムなどの新しい設備を導入する必要があります。従業員規模や書類の量によって変わりますが、導入する初期費用だけでなくランニングコストも発生します。
しかし、電子化される分、紙で行っていた作業の人件費が浮きます。長期的に見れば、コスト削減となるでしょう。

ルールを基に管理・運用する負担

電子帳簿保存法に対応するためには、それぞれの企業ごとに要件を満たすためのルールを作り、社内で徹底する必要があります。
正確なルールを策定するためには、知識やスキルが求められます。また、社内でルールを管理し、実際に運用していくことも大切です。

システムを保守する負担

電子帳簿保存法に関係する書類は、日々の業務の中でも扱う機会が多いです。その書類を管理しているシステムに障害が発生すれば、業務は大幅にストップしてしまうでしょう。自社で管理する場合は、システムを保守する負担も発生します。クラウド型のシステムであれば自社でシステムを保守する手間が省けるのでおすすめです。

まとめ

電子帳簿保存法に対応するメリットは大きいので、これから対応する企業も、既に対応済みの企業も改正点を押さえておきましょう。
自社に合った方法で電子帳簿保存法に対応し、業務効率化を進めてみてください。

<この記事のポイント>

  • 2022年1月施行される電子帳簿保存法の改正では、承認制度の廃止やタイムスタンプの要件緩和など、テレワーク推進に向けた抜本的な見直しがされる
  • 電子帳簿保存法の改正により、書類関連の業務が簡素化されるため、業務効率化はもちろんコスト削減にもつながる

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