当座比率とは何か? 計算方法や流動比率との違い、目安を確認

当座比率とは何か? 計算方法や流動比率との違い、目安を確認

当座比率とは、当座資産の流動負債に対する割合のことを言い、会社の短期的な債務支払い能力を示す経営指標です。一般的に「100%を超えたら会社の資金繰りは安全」と言われますが、安全性以外に会社の資本を活用しきれていなかったり、資金繰り難があったりと、様々な可能性を検討することができます。

今回は、一般的な計算方法や流動比率との違い、貸倒引当金を含めた計算方法を紹介します。

税理士・税務ライター 鈴木まゆ子様

【この記事の執筆者】
鈴木まゆ子

税理士・税務ライター

2000年中央大学法学部法律学科卒業。(株)ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て、2012年税理士登録。税金の正しい知識を広めるべく、WEBを中心に多数の記事執筆・税務監修を行う。分かりやすい解説に定評がある。共著「海外資産の税金のキホン」(税務経理協会、信成国際税理士法人・著)。
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当座比率とは何か? 計算方法を確認

当座比率とは、流動負債に対して当座資産がどれくらい占めるかを示す指標です。会社の短期的な支払い能力を示す指標として用いられます。

計算方法

当座比率は、次の式で計算します。

当座比率(%)= 当座資産 ÷ 流動負債 × 100

「当座資産」「流動負債」のそれぞれの意味は、次の通りです。

当座資産とは何か

当座資産とは、流動資産の中でも「現金」及び「短期間で容易に現金化しやすい資産」を言います。現金や預金、売掛金や受取手形などが当てはまります。流動資産と似ていますが、流動資産は棚卸資産を含めるのに対し、当座資産は棚卸資産を含めません。また、仮払金や前払費用のように、費用に振り替える可能性が高く、換金性があるとは言えないものは当座資産には含めません。さらに、貸付金などでも回収可能性の低いものも除外します。

当座資産について詳しくは、以下の記事をご参照ください。
当座資産とは? 流動資産との違いや勘定科目、当座比率の求め方を解説|バックオフィス進化論

流動負債とは何か

流動負債とは、会社の営業活動に関わる支払債務や1年以内に支払期限が到来する債務のことです。買掛金や前受金、短期借入金などが当てはまります。短期間に支払期限が到来するため、多すぎると現預金が枯渇し、会社の資金繰りが悪化します。

流動負債について、詳しくは以下の記事をご参照ください。
流動負債とは? 固定負債との違いや勘定科目、経営指標としての使い方を解説|バックオフィス進化論

当座比率と流動比率の共通点や違いとは

当座比率と似ているものに、流動比率があります。流動比率と当座比率との共通点や相違点について見ていきましょう。

流動比率とは

流動比率とは、流動負債に対して流動資産がどれくらいあるかを示す割合です。次の式で計算します。

流動比率(%) = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100

当座比率と流動比率の共通点

流動比率も当座比率も、会社の短期的な支払い能力を示すという点で同じです。急に支払いを迫られたときに対応できるか、それとも資金繰り難に陥るかを示します。

当座比率と流動比率との違い

流動比率の計算要素である流動資産は、棚卸資産を含めます。一方、当座比率の当座資産は棚卸資産を含めません。棚卸資産は不良在庫化などの問題があるため、必ずしも短期に現金化できるわけではないからです。また、前払費用のような経過勘定や仮払金のように費用に振り替える可能性の高い流動資産も除外します。そういった点から、会社の短期的な支払い能力をより厳しく評価するなら、流動比率よりも当座比率のほうが有用です。

当座比率の目安と分析方法

「これくらいなら会社の資金繰りは問題ない」と言える目安や、当座比率の度合いから何が見えてくるのかを確認しましょう。

安全と言われる目安

「会社の財務は安全」とする当座比率の目安には、様々な見解があります。しかし、主だった見解をまとめると、100~120%が安全だと考えることができます。だからといって100%を下回れば直ちに危険、というわけではありません。日本の企業の当座比率の平均は85~90%程度です。

比率が高いときの可能性

当座比率が高いと、財務安全性が高く、急に短期債務の支払いを迫られたとしても資金繰りに行き詰まる可能性は低いと言えます。その一方、会社の資本を経営に活用しきれていない可能性もあります。特に現金と預金が多いなら、成長のための投資の状況を確認するとよいかもしれません。

比率が低いときの可能性

当座比率が低い場合、財務安全性が低く、資金繰り難に陥る恐れがあります。特に買掛金と短期借入金が膨らんでいるなら要注意です。買掛金は仕入先からの信用を失うリスクが、短期借入金は利払いで資金が枯渇する恐れがあります。

貸倒引当金があるときの当座比率の計算方法

当座比率は、換金性の高い売掛金や受取手形などの当座資産を要素として計算します。ただし、こういった営業上で生じた債権も、状況によっては回収できるとは限りません。そのため、貸倒引当金も考慮した上で当座比率を計算することがあります。

貸倒引当金とは何か

貸倒引当金とは、取引先の倒産などにより債権が回収不能となった場合に備えて、あらかじめ損失額を予測して計上しておく引当金のことです。売掛金や受取手形、貸付金や未収入金といった債権について計上します。

当座比率の計算方法

貸倒引当金がある場合の当座比率は、貸倒引当金が設定されている場合、対象となる債権から貸倒引当金を差し引いた金額で当座資産を計算します。

例えば、現預金が100万円、売掛金が400万円、売掛金に設定された貸倒引当金が100万円、買掛金が300万円、短期借入金が200万円だったとしましょう。

この場合の当座比率は、次のように計算します。

1. 当座資産を計算する
現預金100万円 +(売掛金400万円 - 貸倒引当金100万円)= 当座資産400万円

2. 流動負債を計算する
買掛金300万円 + 短期借入金200万円 = 流動負債500万円

3. 当座比率を計算する
当座資産400万円 ÷ 流動負債500万円 × 100 = 当座比率 80%

貸倒引当金を含めない当座比率との違い

貸倒引当金を考慮するかしないかで、当座比率はどう変わるのでしょうか。ここで比較をしてみましょう。

先ほどの例を用いて、貸倒引当金を含めずに当座比率を計算してみます。

1. 当座資産を計算する
現預金100万円 + 売掛金400万円 = 当座資産500万円

2. 流動負債を計算する
買掛金300万円 + 短期借入金200万円 = 流動負債500万円

3. 当座比率を計算する
当座資産500万円 ÷ 流動負債500万円 × 100 = 当座比率100%

当座比率は、貸倒引当金を含めないほうがより高くなります。貸倒引当金を含めないほうが会社の財務安全性は高くなるわけです。ただし、それは見た目の数値でしかありません。

貸倒引当金は「貸倒を予測して見積もった損失可能額」を意味します。つまり、売掛金として貸借対照表上に計上されていても、全額を回収できるわけではありません。貸倒引当金を含めずに計算した当座比率は、貸倒引当金を考慮した当座比率よりも信頼性が落ちることとなります。会社の財務状況をより正確に把握するなら、貸倒引当金を含めて当座比率を計算したほうがいいでしょう。

当座比率から会社の短期的な資金繰りが分かる

当座比率を正確に計算すれば、会社の短期的な財務安全性を確認できます。平常時は会社のお金が回っていても、非常事態が生じた場合などに、急にお金が必要になる場合もあるかもしれません。そんなとき、当座比率が低ければ、あっという間に倒産するかもしれないのです。不測の事態に備えて、時々当座比率を計算し、会社の資金が十分にあるかどうかを確認するようにしましょう。

<この記事のポイント>

  • 当座比率は会社の短期的な安全性を示す指標である
  • 100%を超えると安全と言われるが、100%以下が即危険なわけでもない
  • 貸倒引当金を考慮した当座比率は、より厳格な安全性を示す

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