請求書をメールで送ってもOK?印鑑は?  文例や注意点を紹介

請求書をメールで送ってもOK?印鑑は? 文例や注意点を紹介

デジタル化が進む中、請求書をメールやシステム経由で対応している企業も多いことでしょう。コスト削減や業務効率化にもつながりますが、表計算ソフトや文書作成ソフトで作った請求書をそのまま添付すると、改ざんされる危険性があります。

今回は、請求書をメールで送付する方法や注意点、文例などを紹介します。

石動総合会計法務事務所代表 石動龍様

【この記事の監修者】
石動龍

石動総合会計法務事務所代表

青森県八戸市在住。公認会計士、税理士、司法書士、行政書士。読売新聞社記者などを経て、働きながら独学で司法書士試験、公認会計士試験に合格。ドラゴンラーメン(八戸市)店長、ワイン専門店 vin+共同オーナー、十和田子ども食堂ボランティアとしても活動している。趣味はブラジリアン柔術(黒帯)と煮干しラーメンの研究。2021年中の不動産業開業が目標。
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請求書はメールでも送れる?

請求書は取引が終了した際に、取引やサービスの対価を示す証明書類に値します。日本では商慣習により、基本的には請求書の原本を郵便で送っていましたが、発行側と受領側、双方の同意があれば、請求書を電子化しメールで送付することもできます。

時代の進展と共に、経理業務も進化し、デジタルで対応する企業も増えています。会社法などで保管が義務付けられている請求書が、2005年施行の「e-文書法(通称)」により電子保存が認められたことも要因の一つです。

請求書は紙媒体が原則?

請求書の発行は、法的に義務付けられているものではありません。また、請求書が紙媒体でなければならないという原則もありません。

しかし、請求書原本を提出するため、郵便で送ることが習慣付けれている企業もまだまだ多いので、必ず取引先の同意をとるようにします。このような企業には、データ発行と原本郵送を併せて利用しましょう。

請求書のメールと郵送の違い

請求書のメール送付と郵送の違いは、いくつかあります。一番大きな違いは、届くのに掛かる時間でしょう。郵送の場合、近隣地域であっても最短で翌日に届きます。対してメール送付は届くまでの時間が掛からず、すぐに確認できます。また、電子化された請求書は再発行や修正に便利です。

請求書をメールで送付するポイント

請求書をメールで送る方法や注意点について解説します。

請求書の添付ファイルはPDF形式で

表計算ソフトや文書作成ソフトなどで作成した請求書をPDFに変換して添付しましょう。PDF化することで簡単に修正できない一方、改ざんを防ぐこともできます。受領する側にも見やすく、そのまま印刷することができます。

請求書には、請求金額や振込先銀行・口座番号などの重要事項が記載されているため、PDFを添付する際はパスワードを設定することをおすすめします。

メールを送る際の基本的な注意事項として、外部からのサイバー攻撃を避けるため、使用パソコンやインフラへのセキュリティー対策を万全にしておきましょう。

請求書への印鑑(社印)はどうするか?

法的には、請求書に押印がなくても有効ですが、印鑑(社印)があると、信ぴょう性を高めると共に、不正行為を防ぐことにつながります。

通常の印鑑の場合は、原本に押印しPDF化して送付しますが、デジタル化と共に、近年では電子印鑑が使われています。

簡単な作成方法は、押印した印鑑をスキャンし、画像ソフトで印影の背景を透過させるというもの。それをパソコン上で画像挿入すれば、押印した請求書データを作ることができます。

脱ハンコについて、詳しくは以下の記事をご参照ください。
脱ハンコで何が変わる? 認められている書類や導入するメリットとは|バックオフィス進化論

取引先に同意を得てから送ろう

請求書をメールで送付するためには、一般的には取引先の同意が必要となります。フォーマットや必要事項など、送付する前に受領する側の希望を把握しなければなりません。

取引先が独自のフォーマットを使用しているようであれば、先にフォーマットを送ってもらいましょう。取引先が紙でファイリングしているなら、請求書も印刷したものを郵送します。

また、請求書の押印についても事前に確認してください。印鑑を原本に押印した請求書データで良いか、電子印鑑の入った請求書データで良いか、取引先の合意を得てから送りましょう。

請求書をメールで送付する場合と郵送する場合の例文

請求書をメールで送る際には、データが添付されていることを分かりやすく記載することが大切です。請求書を郵送する際には、封筒に「請求書在中」と記載して分かりやすくします。

基本的にルールはありませんが、メールを開封し、確認しないことには受領したことにはなりません。メールへ記載する件名や本文にも、請求書が添付されていることを示すようにしましょう。

請求書のメール送付に関し、メールのひな形を作成しておけば、次からも便利に活用できます。

請求書をメールで送付するときの例文

メールの件名は、請求書に関するメールであることが分かるように記載します。本文には、宛名や請求内容、添付内容を入れます。文章は、季節の挨拶から始めると良いでしょう。

件名:【xx月分請求書のご案内 会社名】
本文:株式会社xx xx部 xx様 
平素より格別のお引き立てをいただき、ありがとうございます。
株式会社yy zzzzと申します。
x月分請求書をメールにて送付いたしますので、ご査収のほどよろしくお願いいたします。

【添付内容】※郵送で請求書原本に添える案内書のように記載
・請求書(No.xxxx).pdf 1通
添付ファイルが開封できないときやご不明な点がございましたら、お手数をおかけしますが、ご連絡くださいませ。
何卒よろしくお願いいたします。

請求書を郵送するときの例文

請求書を郵送するの場合は、「送付状」に請求書や明細書を併せて送付します。請求書に同封する送付状の例文は以下になります。同封内容の他、決済期限や振込手数料についても記載します。

「請求書送付のご案内」

拝啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
請求書をお送りいたしますので、ご査収のほどよろしくお願い申し上げます。
敬具


xxxx年xx月分請求書(No.xxxx)1通 
xxxx年xx月分明細書      1通

本請求のお振込手続きをxxxx年x月x日までにお願いいたします。
以上

封筒の宛先には、会社名と担当部署・担当者名を記載します。

請求書の封筒の書き方については、以下の記事をご参照ください。
請求書の封筒の書き方はこれで完璧!折り方や入れ方の基礎知識や請求書の電子化についても解説|バックオフィス進化論

請求書を受け取った場合や催促メールの例文

請求書を受け取って「確認しました」といった内容のメールを送る場合や、請求書の送付依頼をする場合のメールの文例について紹介します。

請求書を受け取ったときの例文

件名には、確認したことが分かるように記載し、本文は簡潔にまとめましょう。請求書の場合は、「確認しました」「受け取りました」「受領しました」と記載します。相手の状況によっては、「拝受しました」と丁寧に表現することも可能です。また、「確かに」と付けると相手に安心感を与えられます。

件名:請求書到着のご連絡
本文:株式会社xx xx部 xx様
平素より大変お世話になっております。株式会社yyのzzです。
本日、××月お支払い分の請求書を確かに受け取りましたので、ご報告申し上げます。
××月××日にはお振込手続きをさせていただきますので、ご確認お願い申し上げます。
取り急ぎ、請求書到着のご連絡を申し上げます。

上記の例文は、郵送・メールで受け取った場合共通の一般的な例文です。メールで受け取った場合には、件名を変えずに返信することも可能です。

請求書の催促メールの例文

請求書がまだ送られてこない場合は、送付依頼のメールを送りましょう。しかし、取引先にはなかなか送りにくいものです。担当者同士の関係性にもよりますが、配慮した文面を心掛けビジネスマナーをしっかり守りましょう。

催促メールの模範的な書き方は以下です。

件名:【xx月分請求書について】
本文:株式会社xx xx部 xx様

平素より格別のお引き立てをいただき、ありがとうございます。yy会社 zzzzと申します。
先日は弊社にお越しいただき、誠にありがとうございます。

「××××」の件ですが、弊社で請求書の到着が確認できておりませんので、
念のため確認の連絡をさせていただきました。

ご多忙の中で恐縮ですが、事務処理の関係で
◯月◯日(◯曜日)までにご送付いただけますでしょうか。

なお、本メールと行き違いになった場合は、何卒ご容赦ください。
今後ともよろしくお願いいたします。

メール送付要らずの電子請求書サービス

メール送付要らずの電子請求書サービス

電子請求書サービスは、請求書をデータ化したものをネット上で確認できるサービスです。携帯電話やクレジットカードの利用明細やWeb請求書も同様のサービスの一つです。

ダウンロードタイプは、作成した請求書をクラウド上にアップし、取引先にダウンロードしてもらいます。オンライン上でやりとりしたデータは数カ月保存でき、先方がダウンロードしたかどうかも確認できます。

クラウド上で処理するタイプは、請求書の作成・発行・受領まで一貫して行えます。電子化された請求書の保存、請求書の修正・再発行などの検索もしやすくなっています。

請求書のツールについて、詳しくは以下の記事をご参照ください。
請求書作成を効率化しよう! ツールを導入するメリットや選ぶポイントを紹介|バックオフィス進化論

電子請求書で業務の効率化

請求書の件数を多く取り扱う大企業では、特にネット上で完結する電子請求書サービスが、業務の効率化に貢献します。請求書を自動で一斉送信でき、人的作業の手間を省き、作業時間も大幅に短縮できます。また電子請求書サービス導入に経費は掛かりますが、郵送に掛かっていた郵送費・印刷代・封筒代などコスト削減が実現します。

また、個別にメール送付していた方法に比べ、誤送信や情報漏えい、データ傍受などのリスクを低減出来る可能性があります。

電子請求書の注意点

電子請求書サービスを利用するには、取引先の同意・承諾が必須になります。取引先の内部環境を理解し、紙媒体での請求書が必要な場合や、自社独自のフォーマットを利用する場合にも対応できる柔軟な体制を整えておきましょう。

保管するときは、情報検索しやすいようにフォルダーを整理しながら保存します。請求書の保存義務は原則として法人は7年間、個人事業主は5年間と法的に定められているので、途中でデータを紛失しないよう、定期的にバックアップしてください。なお、令和5年10月1日から適用されるインボイス制度では、適格請求書発行事業者は、相手方(課税事業者に限ります)からの求めに応じて適格請求書(インボイス)を交付する義務があります。

また、請求書作成や管理のアクセス権を制限すれば、内部での情報流出が防げます。

請求書の電子化やインボイス制度については、以下の記事も併せてご参照ください。
請求書の電子化にむけて。書き方や便利なテンプレ、作成サービスを紹介|バックオフィス進化論
インボイス制度とは? 2023年の導入に向けて、概要や必要な準備を解説|バックオフィス進化論

メールによる請求書送付は多様化する働き方に対応

請求書をメールで送付することは、法的にも認められ、取引先との同意確認、承諾があれば可能です。送付の方法や形式は、取引先に事前に確認する必要があります。

昨今、テレワークや在宅勤務などの働き方も多様化され、請求書をメールで送付することは、こうした時代変化にも対応しています。働き方の多様化は、業務手段の多様化、効率化にもつながりますし、在宅で業務を行う個人事業主にとっても便利な手段です。

画期的で便利な半面、メールツールだからこその注意点を理解しておきましょう。特にセキュリティー対策や取引先への確認には注意が必要です。

取引先件数が多い大企業では、メール添付よりも効率的な電子請求書サービスの利用も検討しましょう。コスト削減や事務処理の効率化など、さまざまなメリットがあります。

<この記事のポイント>

  • 請求書は改ざんされないためにもPDFデータで送付しよう
  • メールには請求書が添付されていることを分かりやすく記載する
  • 送付先の同意を得た上で運用を行おう

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